菩薩

静かなる叫びの菩薩のレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.6
加害者の男性は良くも悪くも几帳面なのだろう。いざ犯行に及ぶその直前、今日で自分の命をも絶つ事を決意していると言うのにきちんとシーツを整えしっかりと皿を洗い、本来であれば男性たる象徴である筈の髭までも剃る(就活の為に臑毛を剃る女性との対比)。だからこそ「男性」はこうあるべきで「女性」はこうあるべきだとの概念を自分の力では覆す事が出来なかったのかもしれない。とは言えそんな彼に同情の余地はまるで無い、あまりにも愚か、その一言に尽きる、が、これは社会が齎した悲劇である事も否定は出来ない。社会が当然の様に奪い独占して来たものを返還していく時にそれを「奪われる」と勘違いしてしまう人々がいる。その手で奪い傷つけた命は自分が最後に縋ろうとした「母」から同じ様に産み落とされた命であり、その命が生まれる迄にどれだけの血が流されたか、その事に気付くのがあまりにも遅過ぎた。
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