【苦月の海】
ポランスキー新作『毛皮のヴィーナス』に合わせ久しぶりに再見…て、公開もう22年前かよ!ヒュー・グラントもクリスティン・スコット・トーマスも若い若い。
しかし何より、ヒロインのエマニュエル・セニエがまだ娘さんですわ。ナタキンを堅くしたような存在感でしたね。
初見の感覚を思い出したのですが、138分かけて語る話じゃないと思う。あるカップルの、SMを思わせる関係の愛憎史を延々追うのですが、勝手にやってれば、という気分になる。
主人公、ピーター・コヨーテが回想で延々と、自分の気持ちを副音声のように語るので余計、心が離れます。女は男を人生の一部と思い、男は女を欲望の対象としか見られなかった。そんなすれ違いはあって、善悪でいえば男が悪い。
でも、だめんずうぉ~か~を続ける女の気持ちにも入り込めないし、結局、女も男と同じレベルに墜ち殺伐とした関係のままだから、添い遂げようが殺し合おうがお好きに、割れ鍋に綴じ蓋なんだしね、と他人事で終わりました。
2人の、互いの求め方…性描写が特異であることが見せ場の筈ですが、この程度のことやってるカップルって、公開当時でもさほど珍しくなかったんじゃないかと思う。何度見ても、セニエさんの顔面騎乗はよかったですけどね(笑)。
地味な印象のK・S・トーマスさんて、実はめっちゃいい女で、本作でも伏兵として潜んでいますね。が、あまりに彼女を描き足りないから、ラストのエロスが唐突に終わり残念。
ヒュー・グラントは、ふつうにおマヌケですね。この演技はいいのか悪いのかよくわかりません。
原題は苦い月、でハネムーンの反語らしい。
でもこのカップルなら、苦味も甘味も同じようなものだなあ、と思いました。苦い映画をみたかった。
<2015.3.3記>