深獣九

ギニーピッグ 悪魔の実験の深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

ギニーピッグ 悪魔の実験(1985年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

【酷評しますしかも長いです】

最低の作品であった。呆れを通り越して、怒りすら覚える。理由を以下に記す。
なお、かなり酷い言葉を使う場合もあるので、この先読んでいただける場合、ご気分を害されたらご容赦願いたい。

・圧倒的に足りない、作品づくりに対する誠意のなさ
・それ故に低いクオリティ
・目的・目標なき迷作


この作品に怒りを覚える最大の理由が、誠意のなさである。おそらく、制作側はスナッフビデオを再現しようとしたのであろう。だが、圧倒的に下調べや勉強が不足している。素材の力に頼り過ぎ、作品をきちんと作ろうとしていないように感じる。

たとえば、加虐者・被虐者のクソ芝居である。

先に説明すると、物語は攫われた女性が様々な拷問を受けて受けて受けまくるだけ。ストーリーらしいものはない。うむ、それはそれでけっこう。なぜなら、題名は『ギニーピッグ』だ。ギニーピッグとは天竺鼠、モルモットのこと。つまり、女性への拷問は「実験」なのである。そこは、喜怒哀楽の感情を排した世界なのだ。

豊富な拷問方法は、それぞれ漢字一文字で表される。殴、蹴、抓、回、音、剥、焼、虫、臓、針だ。列挙された文字を見るだけで、ワクワクするではないか。

ところが、ひとたび実験が始まると、途端に白けてしまう。
まず加虐者。貧弱だ。殴るにしても蹴るにしても、なんだかなよなよして必死なのである。世紀の悪魔的大実験なのだ。肉体精神とも屈強な者が執り行うべきではないか。殴るにしても蹴るにしても弱々しいし、回数も200回程度。それだけで精度の高いデータが得られるとは、とても思えない。
また、拷問しながら「この野郎〜」「おらおら〜」「もうおしまいか〜」などと威嚇する。まるでにわとりのよう。もう、ダサいのである。
ここはもっと冷酷にすべき。言葉など不要。酷い仕打ちを淡々とこなしてゆくのが、正しい作法なのである。また、殴るも蹴るも回すも、最低1000回はやってほしい。女の顔が変形するくらいやらねば意味がない。なんだそれは、ちょっと赤くなった程度ではないか。そんなんで正確なデータが取れるか。
しまいにこいつら、臓物を投げながらキャッキャウフフだ。ふざけるな軟弱者め。

また、被虐者である女の芝居も酷い。「きゃあ〜」「痛〜い痛〜い」「はあぁ〜」「ん〜」。いや、熱した油をかけられて、そんな喘ぎ声とも間違えそうな悲鳴で済むか?もっと「ごえぇぇぇぇ!」「ぐぎぃぃぃぃぃぃい」「おごえおあぁぁぉあえおあ!」「ひぎぎぎぎぎぎい!」など、声にもならない断末魔の叫びが漏れるはずだ。もしくは声なんか出せずに、歯を食いしばって目を剥き出すはずだ。あへあへ言ってる場合か。馬鹿もんが。

ここまででも、きちんと作ろうとしないスタッフの誠意のなさがてんこ盛りなのだが、さらに適当に撮った映像も酷い。
例えば、被疑者を延々回す(と言っても200回程度)拷問。途中でむりやり酒を飲ます。それはなかなか良い試みだ。案の定、女は途中で吐く。そして実験終了。
はぁ? なんそれ?
吐いてからが本番でしょうが。吐いて、飲ませて、回す。また吐いたら、また飲ませて回す。失禁するまでやれよ。
しかも「うわ〜吐いた!きったねーwww」だってさ。中学生かお前らは。崇高な実験だって言ってるだろうが! 真面目にやれ!

それに虫。煮えたぎる油をかけたあとの、グズグズな肌に蛆虫這わせる実験なのだが、これは正直閉じかけた目が開いた。好きなやつだ! と上がりかけたテンションは、あっという間に急降下。
なぜなら、ウジ虫は皮膚の表面をウロウロするだけで、皮膚の下や鼻の穴に潜ろうとしない。しまいには、ツルッと滑って床でのたうってる。いや、違うだろ! なんのために、肌を痛めたんだ。虫散らばせてきゃあきゃあ言わせるためじゃないだろうが。
しかも! しかもだよ、虫這いずってる間、女は気を失っちゃってるのだよ。まったく反応しないのよ。きゃあとも言わないのよ。これ、なんのためにやってるの? どうしたいのか、どういう反応が欲しいのかがまったく伝わってこない。
臓物投げつけるときも同じ。女はマグロ状態無反応。散々臓物まみれになった最後に「きゃあ」って飛び起きただけ。なんそれ。
作品作りってさ、観客ありきじゃない? 観る人がいて成り立つわけじゃない? 伝えようとしなければ、作る意味がないよ。自慰行為なら、世に出すなよ。鬱陶しい。

他にも、抓ったら肉を引き千切らなきゃいけないし、爪は引っ張るんじゃなくて反対側に毟らなきゃだめだ。
すべてにおいて甘い。

それはひとえに、冒頭に述べた通りスタッフの調査不足と勉強不足、そしてそれでいいと思っている慢心のなせるものである。
拷問するならヤクザに取材すればいいし、文献だって探せばあるだろう。お粗末すぎる。
私の愛してやまない平山夢明先生のメジャーデビュー作『異常快楽殺人』は、世界中の殺人鬼を紹介した小説だが、巻末には参考文献のリストが並ぶ。膨大な数のそれは、まるでこの文庫本が論文であるかように思わせる。『異常快楽殺人』は傑作と評されているが、それを納得させるだけの資料数なのである。『ギニーピッグ』のスタッフは、正座して平山先生のご講義を聴くべき。あと『マーターズ(パスカル・ロジェ版)』を観るべき。


乱筆乱文お許しいただきたい。嫌いならその一言だけ記せばよいのだが、性分なのかどうにも許せず罵倒長文になってしまった。
次は良い作品とめぐり逢い、称賛の感想文を認めたいものだ。映画の神に祈りつつ。
深獣九

深獣九