宗教を笠に着た人間の傲慢さ、残酷さ。これがカトリックに改宗した作家が書くものなのか。これを見て宗教がいいものとはぜんぜん思えない。
後半誰もセバスチャンのことに触れなくなるのが信じられなくて戸惑った。前半でのセバスチャンの描き方には愛があったと思ったし、チャールズのこともそんな人じゃないと信頼をおいて見ていたのに。
セバスチャンが本格的に酒に溺れ始めた頃、母からの監視者を追い払ってやると言っておいて何もしなかったチャールズと、ジュリアを救わずに離婚だけさせてブライズヘッドに置いて去るチャールズは結局そういう男ってことだなと思った。誠実ぶってるだけで口だけの男。兄妹両方の手を取って、ふたりのトラウマの元凶は家族だと分かっていたのにそこに寄り添おうとはせず、でも家族の一員にはなりたがった男。
誰もチャールズを責めないので旧友がビシッと言ってくれてよかった。その目線がちゃんと映画に入ってなかったら見てられなかった。結局なにを描きたい映画だったんだろう。チャールズも優しいだけの誠実な人じゃなくて多面的な人物なんだってことはわかったけど。
だからこそ、楽しかったひと夏が本当にキラキラと優しくて、あのもの悲しいピアノのメロディーと共に心に残る。
台湾映画の夜に逃れてと描いてるものがよく似てる。ある種の古典なのかな、こういうお話って。