磯野マグロ

明治大正昭和 猟奇女犯罪史の磯野マグロのレビュー・感想・評価

3.8
【ストーリーなしの超アンバランス映画】2

レイプされ自殺したらしい妻の解剖をするはめになった解剖医(この検死のシーンが牛の解体みたい。意味なくグロでヤバイ)が、死の謎のヒントを求めて猟奇殺人の捜査ファイルを読みふける、その内容を再現ドラマ風に、オムニバスで見せる、ただそれだけ。オチはない。
ゲスで人でなしで女とやることしか考えてない男ばかり出てくるのだが、それを「女の体の魔性のせいか」などとあたかも人のせいのように言い放つナレーションが最高、いや最低。「劣情」という言葉がぴったり、トータルで何が言いたいとかそういうストーリーなしの、全編これ劣情映画だ。そして圧倒的な虚無感というか不条理なまでの終わり方。もちろんここで虚無を感じるのは観客です。涙
しかし、長短取り混ぜ5本ほど入る劣情芝居の一本一本はなかなかの出来。まず演じるみなさんが最高。女性陣はみんな美人で肉感派ぞろいで、めちゃくちゃレベル高いです。個人的にはつのだじろうのマンガみたいな三白眼のつり目がなんとも魔性な、藤江リカさんがイチ押しかな。
男性陣も小池朝雄がシリアルキラー小平義雄を大熱演(歯が汚いのがステキ。でも声と歯並びはいい。笑)。若杉英二が色っぽい旦那役。チョイ役も由利徹、大泉滉、加藤嘉…とさすが石井輝男の豪華さ。
自分はよくわかってなかった阿部定や毒婦高橋お伝の話をしっかりと見られたのも良かった。お伝が雪の中斬首で処刑されるシーンは、首切りが土方巽なんだけど、クリス・ペプラーそっくりで爆笑。なぜか切り損ねるペプラー、血だらけで転げ回るお伝。朱色の血が雪を染めていく…。
演出は安定感あるし、ひとつひとつの絵も綺麗だ。しかし、全体としてはひどい(笑)。というか、余計なストーリーを入れずに劣情だけをつるべ打ちした石井輝男は、やっぱり信頼できる男だ。
磯野マグロ

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