ハレルヤ

わたしはロランスのハレルヤのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.0
国語教師を務める主人公の男性ロランス。仕事も恋人のフレッドとの関係も順調だったが、彼には女性になりたいという大きな悩みがあった。それをカミングアウトした事からフレッドや家族との関係、社会的地位など様々な問題と向き合っていくドラマ。

秀才グザヴィエ・ドラン監督作品。過去にいくつか彼の作品を鑑賞していますが、本作も彼のセンスが存分に生かされた内容になっています。所々での音楽や映像効果、カメラワークに至るまで彼ならではの演出に満ちたもので、当時22歳とは思えない才能の塊が伺えました。

性同一性障害を抱えるロランス。今まで自分の内に秘めていた気持ちを吐き出し、女性として振る舞うもそこに待ち受けていたのは容赦ない現実。教師としての職を失い、家族からの理解も得られない。社会のはみ出し者扱いされ苦悩するロランスをメルヴィル・プポーが圧巻の名演で魅せてくれます。

突然のカミングアウトに戸惑うも、彼を受け入れて支えようとする恋人のフレッド。ロランスを愛するも社会的な立場の難しさから中絶したり、悩み苦しむ難易度の高い役柄をスザンヌ・クレマンが見事に演じきっていました。

ロランスに心ない言葉を掛けてくるカフェの女主人にブチギレる姿には、フレッドの苦しみが体現されていた場面で強烈な印象が残ります。

時に別れてまた再会してのロランスとフレッドのラブストーリー。複雑で表現も難しい物語ですが、キャストとスタッフの相性がしっかり噛み合い、素晴らしい仕上がりになっていたと思います。2人の最初の出会いの場面でラストを迎える構成も心に響くものがありましたね。

難点を言うとしたらやはり長さ。3時間近くはちょっとしんどかった。それでも単調ではない展開と演出のおかげで最後まで堪能できました。LGBTの過酷な現実を描いたメッセージと自身の演出センスの融合。他の監督じゃ真似できない唯一無二の作品でしょう。
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