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わたしはロランスのペコのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
3.0
性問題めんどくせー!みんなジャガイモになってしまえばいいのに!(そんな映画ではありません)
たぶん心と身体(外見)の不一致に関する話だよね?(え、違う?)

性転換手術はしないけど女装はしたいというロランス(♂)と、その恋人フレッド(♀)の物語。
ややこしいのは女装家なんだけど、性的嗜好は女、もしくはどちらでもアリな男ってとこ。でも、フレッドは逃避行的な生活を望まず、ロランスに「地上に降りてきてよ」と言う。
この映画の見せ場で多用されてる、空から水や服や落ち葉が降ってくる表現は、地上社会とそこから外れた天界との対比、もしくは感情の発露を暗示しているのだろうか。とにかく素敵な光景です。

そして女装家ロランスは社会の認識(=普通)から外れた存在として生きていくことを誓う。潔い。
でも社会から外れて何を犠牲にしたのか、そこの描写がいまいちピンときませんでした。苦悩はしていたけど経済的には問題なく暮らしていたようですし…。

あとこの話、言い換えればブサイクが整形せずにイケイケファッションで周囲の目を気にせず生きているのと同じことですよね。でもそれを見た何人かは不快だと感じるかもしれない。外見は周囲の人に対しての自己アピールでもあり、外見を変えるだけで周囲の反応は本当に変わります。だから整形や性転換は何にも悪いことだとは私は思わない。むしろ心と身体、合わずして生きろという方が残酷なように思います。だからそれさえ乗り越えて生きていくと決意したロランスは、世間の好奇心の目さえ笑い飛ばす強さがある人物でないと私は納得出来なった。ロランスはロランスのまま。だから素敵なのです。(たぶん)
(そもそも自己をさらけ出すのは気持ちいいことだけど、はたから見たらただのヤバイ奴ってこと多いし。だから本当の自分が世間で認められるのは凄く難しくて珍しいことだと思います。)

また、マイノリティー側の苦悩を伝えることは大切ですが、この作品を他作品と比べてしまうと訴求力は低いかなと。
オゾン監督の『彼は秘密の女友達』の方が、男女の差異についてはよく描けていたと思います。

映像と音楽は少しくどく感じました。真正面のカット、原色トーンの多用は30分で飽きます。(個人的意見です)
ドラン監督の作品はマミーで十分かな。(それでも新作期待してます^-^)
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