【修羅場カロリーオフ】
これがあるから楽しめないのかな、というハードルを幾つか感じてしまった。
フランス語がわからないから、字幕のみだと国語教師ジェルマンが夢中になる生徒クロードの、肝心の文才がどれ程のものかわからない。語られる内容含めて凄いと思わなかったけどなー。他が掃き溜めだから鶴に見えたんだろうか?
と、フランス格差社会の現実と、制服のない学校文化を肌感で持っていないと、本当の面白さがわからないような気もしました。
その上での感想ですが、人物の葛藤が薄味で食い足りなかった。それなりに火薬は仕込まれて行くのに起爆しませんね。
誕生する妄想コンビの暴走を匂わせるラスト以降の方が、もっと面白い「物語」が始まる気がします。
作品の狙いはそれなりに受け取れました。クロードは学生服を「被る」ところから登場しますが顔を見せない。彼にとって制服は、未知の世界(「中産階級」の真の意味は?)への通行証であり、逆に「最後列の少年」でいるための保護色でもあるんですね。
で、それがどう変質するかってところが本作の面白み。
ジェルマンはいい年こいて、そんな彼に振り回されるけれどこれは自業自得。クロードの物語力というより、そこに進んで沈み込んだことが問題でしょう。創作活動におけるアキレス腱ってことでしょうか。
でも危険なのはプロットではなく自己管理の方ですね、このレベルだと。クロードは自分の欲望を素直に書けと指導され従いますが、この年頃の妄想ってこんなもんじゃないと思うぞ(笑)。おフランスにスカしていて肝心なところで不満。
そして、クロードはジェルマンを操作する程の策略家ではないけれど、最後までネコ被っててこそばゆい。ジェルマンが洞察力からそれを引き剥がす一幕が増えれば、二人の物語としてもう一段深まったように思う。
それでも全体のトーンとして、自分の欲望をピンボケのようにしか表せない…という感覚が今の映画なんだな、とは沁みました。その点では価値的。
2大熟女優トーマスさんとセニエさんはどちらも好きなので眼福でした。セニエさん、地味な主婦でもどこかフェロモン漏れちゃうところがいいです。やっぱさすが、かつてピーター・コヨーテに顔面騎乗してた女だ。
<2013.10.27記>