くりふ

危険なプロットのくりふのレビュー・感想・評価

危険なプロット(2012年製作の映画)
3.5
【修羅場カロリーオフ】

これがあるから楽しめないのかな、というハードルを幾つか感じてしまった。

フランス語がわからないから、字幕のみだと国語教師ジェルマンが夢中になる生徒クロードの、肝心の文才がどれ程のものかわからない。語られる内容含めて凄いと思わなかったけどなー。他が掃き溜めだから鶴に見えたんだろうか?

と、フランス格差社会の現実と、制服のない学校文化を肌感で持っていないと、本当の面白さがわからないような気もしました。

その上での感想ですが、人物の葛藤が薄味で食い足りなかった。それなりに火薬は仕込まれて行くのに起爆しませんね。

誕生する妄想コンビの暴走を匂わせるラスト以降の方が、もっと面白い「物語」が始まる気がします。

作品の狙いはそれなりに受け取れました。クロードは学生服を「被る」ところから登場しますが顔を見せない。彼にとって制服は、未知の世界(「中産階級」の真の意味は?)への通行証であり、逆に「最後列の少年」でいるための保護色でもあるんですね。

で、それがどう変質するかってところが本作の面白み。

ジェルマンはいい年こいて、そんな彼に振り回されるけれどこれは自業自得。クロードの物語力というより、そこに進んで沈み込んだことが問題でしょう。創作活動におけるアキレス腱ってことでしょうか。

でも危険なのはプロットではなく自己管理の方ですね、このレベルだと。クロードは自分の欲望を素直に書けと指導され従いますが、この年頃の妄想ってこんなもんじゃないと思うぞ(笑)。おフランスにスカしていて肝心なところで不満。

そして、クロードはジェルマンを操作する程の策略家ではないけれど、最後までネコ被っててこそばゆい。ジェルマンが洞察力からそれを引き剥がす一幕が増えれば、二人の物語としてもう一段深まったように思う。

それでも全体のトーンとして、自分の欲望をピンボケのようにしか表せない…という感覚が今の映画なんだな、とは沁みました。その点では価値的。

2大熟女優トーマスさんとセニエさんはどちらも好きなので眼福でした。セニエさん、地味な主婦でもどこかフェロモン漏れちゃうところがいいです。やっぱさすが、かつてピーター・コヨーテに顔面騎乗してた女だ。

<2013.10.27記>
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