ShinMakita

野獣死すべしのShinMakitaのネタバレレビュー・内容・結末

野獣死すべし(1980年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

☆mixi過去レビュー転載計画



〈story〉
雨の夜。警視庁・岡田刑事が刺殺され、拳銃が奪われた。間を置かず、暴力団が経営するカジノが襲撃される。襲撃に使用されたのは、岡田刑事の拳銃だった。犯人は長身の男・・・伊達邦彦だ。彼はレバノンやウガンダなどの戦地を渡り歩いた某通信社のカメラマンだったが、ある時変調をきたし、帰国させられた男だった。帰国後、伊達の中に眠っていた野獣の血が目を覚ます。彼の狙いは東洋銀行日本橋支店に集まる数億のカネ。宝石商を騙して強盗に仕立て上げ、支店の防犯システムを確認した伊達は、綿密な計画を立て、相棒となるもう一人の野獣を探し始める。そして見つけたのが、凶暴なレストランのボーイ、真田だった。伊豆の貸別荘に真田を呼び、野獣としての<儀式>をすませたあと、伊達は日本橋支店襲撃計画を実行に移す。しかし支店のなかに、演奏会で知り合った女レイコが客として来ていた。顔を知っている彼女を射殺する伊達。自分の心を乱した唯一の女を殺して逃走するうち、伊達の精神はついに崩壊していく・・・

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非常に前衛的なハードボイルドバイオレンスで、 大藪アクションを期待して観ると、とんでもなく肩透かしを喰らいます。「蘇える金狼」のようなピカレスクロマンの香りは微塵も無く、ひたすら一人の男の狂気を描いた青春映画と言えるかも知れません。優作さんがのめり込んで型にはまらない哲学的というかアートな作品にするんだという意気込みで演技しているのがよく分かるんですが、だからこそセリフ回しが何となく「つくってる」感じが否めません。青森行きの夜行列車内で語る<リップヴァンウィンクルの話>や、伊豆で真田を褒めたたえる「君はいま、確実に美しい」の独白、そしてアベックを襲う真田を見て熱狂するときの長台詞などがその一例。これを良しととるか駄目ととるかで作品の評価も決まるのではないでしょうか。己の死にすら惹かれる主人公像はキタノ映画にも重なりますね。村川監督らしい長回しの緊張感も素晴らしく、記憶に残る一編。野獣死すべしならぬ、野郎観るべし!
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