Melko

野獣死すべしのMelkoのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.7
「私もね、来年30なんすよ。おたくらと同い年。大学出てませんけどね」

「何も心配することはない。僕も最初はそうだった。不安はじき消えます。だって君はいま確実に美しいんだよ」

「寝ますか?寝る前に、お話一つしてあげますよ。リップヴァンウィンクルの話って知ってます?」

うわぁ、すごい。なんてすごい松田優作。
これは松田優作の怪演を思う存分楽しむ作品だ。
松田優作濃度が250%

ほとんど喋らない序盤 でも確実に不穏
少しずつ語りかける中盤 狂気が顔を出す
爆発し叫び狂う終盤 狂気と混乱の果てに

おとなしい奴ほどキレたらヤバいの図
この世の地獄ともいえる「戦争」という極限の暴力は、人格を捻じ曲げ、越えてはならない一線をいとも簡単に越えさせてしまう
人を変えてしまう
あるいは、元々備わっていた暴力性を増長してしまう

ほぼ無口で、低い声でボソボソ喋る序盤から、壊れて暴れまくる終盤への変化が、演技としては分かりやすいんだけど、シンプルに凄い
てかやはり松田優作って基本ボソボソ喋るキャラなのに、なんであんなに通る聞き取りやすい声なんだろうか
周りの人物のセリフはところどころ聞こえにくいところがあったけど、松田優作のセリフは全て聞き取れたわちゃんと。
あとその怪演に大きく寄与しているのが、劇中「まばたきをしてない」こと
YouTubeにもあがるぐらい有名な、終盤、室田日出男に弾丸ロシアンルーレットしながらリップヴァンウィンクルの話をする何分間かのシーン。松田優作の顔が映る場面に結構尺割かれてるけど、一度もまばたきしてない。3回巻き戻して確認したけど、やっぱりしてない。。だからか、シーンの終わり際は目が充血している。(このシーンの臨場感には、室田日出男の迫力満点のビビり具合も大きく貢献してるが)
だがそのほかのシーンも、目を瞑るシーンはあっても、まばたきするシーンはない。常に目が開いたままな姿が、彼が何を考えているかわからない恐怖感を煽る。これは凄まじい。
大人しそうな中に底知れぬ恐怖を湛えた人間が、すぐ近くにいるかもしれない恐怖を与える

抑えられない殺人衝動の末、遂に人を殺した男を滔々と諭す松田優作
全身黒でほっそいシルエット、クネっとして瞳孔開いて語りかけてくる。こわいこわい

無惨にやられるヒロインがずっと下がり眉の困り顔だったのが地味に気になった。美人が台無し気味。なぜ?

鹿賀丈史がハチャメチャ若い!ワイルド!

根岸季衣はダンサーだったのか。まさかのフラメンコ

一転して舞台劇のようになる終盤
張り詰めたものが流れ出す 止められない

人の道を外れた人間を待ち受ける運命
綺麗事やカッコつけでは終わらせない、納得いくものだったので、そこに関しては好感持てた(この表現が合ってるか分からないけど)
蘇る金狼もそうだったな、そういえば
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