ハレルヤ

野獣死すべしのハレルヤのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.8
戦場を渡り歩いてきたカメラマンの伊達。普段は静かに過ごしているが、過去の悲惨な出来事を目の当たりにした事で、野獣のような破壊的衝動がある。自分と同じ匂いを持つ真田と共に銀行強盗を画策するクライムサスペンス。

いやもう松田優作の破壊力が凄すぎる。元々「ブラック・レイン」でマイケル・ダグラスやアンディ・ガルシア、高倉健を超越する圧倒的な演技力で彼の凄さは分かっていたつもりですが、本作での彼は更に強烈。

クラシック音楽鑑賞を趣味にして感情を表に出さない物静かな前半。銀行強盗実行からラストに至るまでの狂気全開の恐ろしい姿には身が震えるような気持ちになりましたね。

あの夜行列車での「リップヴァンウィンクル」の話をしながらのロシアンルーレットのシーンは、本気で怖さを感じるほどのもの。あの演技とは思えない松田優作の冷血極まりない表情は忘れられません。彼の狂気に呑み込まれる共犯者の真田を演じた鹿賀丈史のヤバさも必見です。

どこか芸術性があるように感じてしまうバイオレンスシーン。色んな捉え方があるラストシーン。キャストの演技以外にも魅力が沢山詰まった内容。

今のご時世では再現不可能なほどの昭和時代特有の生々しさがあり、松田優作ほどの熱量と才能と技量を兼ね備えた俳優も今ではなかなか居ないでしょう。戦争がもたらす遺恨という社会派テーマも携えていて見応えはかなり感じた一作でした。
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