面白かった。
まず映画の作りとして至極真っ当。
冒頭でこの映画のテーマを語る。
「人は彼らを嘲笑い震え上がる。
だがこれはあなた方にも起こり得たことです。
彼らも望んでこうして生まれてきたわけではない。」
「彼らには掟がある。
1人が怒りを感じたら全員で怒りを共有するのです。」
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感情表現がとても丁寧(ハンスとフリーダの演技が特に素晴らしい)だし
いわゆる健常者であるクレオパトラとヘラクレスがほんとにクソで
こいつらの言動にいちいち腹が立つし
こいつらに傷付けられていく彼らを見て苦しいし
ちゃんとフラストーションが溜まっていく。
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劇伴もあるんだけど、
サスペンス度が高いシーンほど無音。
毒を盛るシーンとかじっくりねっとりと無音で淡々と見せる。
知的な演出。
画面に吸い込まれる。
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からのラストの復讐劇ですよ。
痛快。
馬車の下に潜ってサッサと移動したり
階段の隙間から監視したり
泥の中を突き進む彼らがどう見てもかっこいい。
「こんな泥水、俺たちが飲まされてきた泥水に比べたらミネラルウォーターのようだぜ」とばかりに泥水の中をグングン突き進む。
痛快です。
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1932年の作品。
公開当時物議を醸し、イギリスでは30年間上映禁止された。
しかし1994年にはアメリカでフィルム遺産として登録され
2005年には日本でデジタルリマスター版が公開。
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この映画は興業としても失敗したし
監督のトッド・ブラウニングは今作でほぼキャリアが終わってしまった、と。
トッド・ブラウニング本人はサーカスの出演者と親交があったので、映画に彼らが本人役として出演するのは普通のことだったし、
むしろ凶悪な健常者の方を〝フリークス〟として描くこの映画のスタイルは批判されるものではないはず。
ただ、
下半身欠損のジョニー・エック以外の出演者はこの映画に出演したことを恥じていたようで
おそらくあまりにも批判を浴びたことで
「出なきゃよかったな!」ってみんな思っちゃったのではと勝手に推察。
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さすがに現代でもこのままマルッと広く受け入れられることはないだろうけど
この痛快さは大きな魅力。
障害者を感動ポルノとして「泣いた〜泣いた〜」と消費し続けている2021年の社会は依然として醜悪。
そんな輩に「感涙必死っ!じゃねーよっ!」と復讐する痛快映画、観たいけどなぁ。
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出演者たちにこの映画に出たことを誇りを持って欲しかったなぁ。
ラストネタバレはコメント欄に。
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ちなみに、
今作にも出演している手足欠損のプリンス・ランディアンは、
みんな大好き(僕は好きじゃない)『グレイテスト・ショーマン』のP.T.バーナムによってアフリカから連れてこられたとのこと。