メモ魔

ハイスクール・ミュージカルのメモ魔のレビュー・感想・評価

3.9
周りが作った自分と、自分の望む自分。
その乖離に誰もが苦しむ青春時代。
あの頃自分の支えになってくれた
恋、友情、そして家族からの愛情。
それを再確認させてくれる作品。

ミュージカル映画本当に好きだな。とまた思わせてくれた作品だった。セリフやストーリー、俳優の絶妙な感情表現など。映画を構成する上で観ている人の感情に訴えかける技術の躍進は止まるところを知らない。これを推し進めてきた背景にあるのは間違いなくミュージカルだ。
セリフやコマ振りだけでは表現できない、伝えきれない感情を歌と音楽に載せる事で、観ている側と演じている側の感情が一致していく。
まるで映画に自分が溶け込んでいくようなそんな錯覚を受ける。
ミュージカルにはそんな力がある。

特に下記のシーンが良かったと思った。

[友人が主人公達のやりたい事を本心から応援すると決めるシーン]
主人公はバスケ部のキャプテンだ。決勝戦を控えた重要な期間にミュージカルの魅力を知ってしまう。
チームメイトはそんなキャプテンの心の変化に動揺するも、最後はキャプテンの思いの丈を支える決心をする。
簡単な事じゃない。
自分が相手に対してこうあって欲しいという姿を押し付けるのは簡単だ。でも本当に相手を思うなら?
自分の感情を一旦外に置き、全力で背中を押してあげること。それができる関係を学生時代に築くこと。ここにこの映画の輝きを見た。

[父親が息子に期待する部分を打ち明けるシーン]
ここのシーンは本当に良かった。自分の親父を思い出す。
[俺の望みがわかるか?]
[優勝?]
[それは結果に過ぎない。お前に楽しんで欲しいんだ。それが達成できれば、俺は試合の結果がどうであれ満足してやめられる。]
両親が娘息子に残せるものは数少ない。貴重で少ない時間を娘息子にどう割いて、どう形にしていくのか。世の両親はその答えを探すために日々思いを巡らす。この映画の父親は、息子が本気で取り組めるものを見つけられるよう全力に力を注いだ。だからこのセリフが出てきたんだと思う。
結果は結果に過ぎない。自分がお前に求めるのは、全力で何かに打ち込む楽しさを実感してもらう事だ。
ここのシーンはグッと心にきた。よく夕食を食べてる時父親に
[俺が毎日一生懸命働くのは、働けるのは、お前が毎日少しずつ育っていく過程に生きがいを感じるからだ。だから俺は仕事を全力で、お前は学校と遊びに全力で望む事。俺の考える家族のあるべき姿はそういう形だ。]
こんな事を言われたが、今になってようやく意味を解釈できた気がする。何事も全力でぶつかる事。そうすることでしか得られない感情を知って欲しかったんだと思う。

3.9点
メモ魔

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