くりふ

ゼロ・グラビティのくりふのレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
3.5
【燃えるないい女】

日本初TCX×ドルビーアトモスの3D版でまず体験。が、アトモスは意味なかった…だって宇宙に、音ないから(爆笑)。

で、やっぱり3Dってこけおどしを超えないなあと実感。妙なホラー演出もシラケるし。崩壊シャトル内部なんて、『ジョーズ』で襲われた漁船の底を覗く演出と同じなんだもん。これってそういう映画じゃないと思うんだけどなー。

宇宙での描写(動き)はどうしてもコンピュータ臭が拭えないし、宇宙服に包まれた人物は3Dメガネの暗さもあり顔がよく見えず、CG役者でいいんじゃねと思えてきたり、初見は前半でほぼダウナーとなりなんだかなーでした。

特に困ったのは、暗いメットの中に覗くサンドラさんのしかめ面が蟹江敬三さんに見えたこと(笑)。

が、気になるところもあり気を取り直し、2D版でもトライすると、今度はなかなかよかったのです。3Dという邪魔ものが消え、かえって映画のいいところが見えて来ました。自分3Dとはかなり相性悪いらしい。

3D効果を最大化するつくりだから、2Dだと隙間だらけで、そこに自分の妄想が入る余地があり面白かったのです。これは小さくて大きい映画で、その振幅の間でいろいろ遊べると思った。

これ基本、生命讃歌ですね。そして言わば人生の仮死状態だった、サンドラ演じるライアンが復活するお話。これが肝だとすれば、元気になる映画だとわかり、「どんな結果になれどこの旅は最高だ!」の台詞に素直に拍手したくなります。

本作では、暗い氷の宇宙で燃え立つ炎は死の魔手ですが、逆にライアンの生命燃焼力とこれが同期していて、燃えろよでも燃えるな!というアンビバレンツで盛り上がるところがなかなか面白い!

生命讃歌からデザイン的に遊べたのは、白くずんぐりした宇宙服がピンボールのように翻弄されつつサバイブする姿が、たった一つ残る精子が、地球という巨大な卵に着床する図に見えて来たことです(笑)。喜国さんの漫画に出て来た精子の精も思いだしちゃったけど。あ、ウディ・アレンが昔演じていた白づくめの精子にも似てるなー。

最後にわざわざあそこに落ちるのは某映画へのオマージュらしいですが、それよりここも、かつてわざわざ海から地上に上がってきた生命の進化、そのしぶとい力強さをなぞっているように思えて、重力のことよりそっちで感動しました(笑)。

これは円環映画でもあり、このラストだとまた、人間は懲りずに宇宙に出て行くんだろうな…そんな生命(力)の業のようなものも感じてしまいました。

天使や人魚、記号的なところでその他、色々妄想して遊びましたが、ここではこんなところにしておきます。

消火器のアバンギャルドな使い方には爆笑しました!かつて、ヘドラと戦ったゴジラがいたした、あることを思い出します。

<2014.2.20記>
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