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トランセンデンスのkyのレビュー・感想・評価

トランセンデンス(2014年製作の映画)
4.0
個人的にかなり興味深かくて考察しながら書いたら論文みたいになってしまった。

死すべき運命だった主人公ウィル。彼は人工知能(AI)を科学者だった。彼の妻は夫の死の直前に、彼の頭脳をコンピュータにインストールした。 それによって自我を持った頭脳の誕生が誕生した。実態のない夫の意識だけが軍事機密、金融、政治から個人情報まで、あらゆる情報を手に入れた。そしてナノテクノロジーまでを…超高速の処理能力で化学反応を引き起こし、ついには生命までをも司る存在となった彼は神とも言うべき存在なのか。そして彼女が本当に愛した夫は…って感じの物語。

テクノロジーの隆盛
現在、人工知能(身近なところだとスマートスピーカー)が世間を騒がせる中、シンギュラリティが実際に起きるとどうなるのか。と言うことをナノテクノロジーの視点から描かれており、今後のテクノロジーによって進化するであろう世界を圧巻の映像美と共に楽しめる作品である。 

ヒロインの恋愛観
この物語は主人公の妻であるヒロインが、コンピュータに夫の知能をインストールしたことである。初めは、善意的な愛情から夫の死を受け入れられず
延命として起こした行動が全ての始まりである。これが物語が進むにつれ変化していく彼女の恋愛観に注目してほしい。

今作品は、他の映画に類を見ない、多面的なジャンルの集合体であり。感じ方も視聴者によって、特に様々になる作品だろう。

テクノロジーの人間への皮肉
「感情は非論理的で矛盾に満ちているおり未知のものに恐怖心を抱く」というシーンから、つまり感情論は恐怖であると、捉えることができる。劇中の人間は人工知能(未知のもの)に対し恐怖を抱いている。しかしナノテクノロジーを駆使した人工知能は医療面で人間にとっての慈善的な行いを狙いとしていた。これは人工知能に対して、恐怖心から嫌悪感を抱く人間を皮肉を交え、ある種の哲学的に表現している描写であった。

恋愛観の変化
パートナーを愛するが故にとった行動が、世界規模の危機を引き起こしてしまう。それによってヒロインが自身の意思で引き起こした事態に疑問を抱くことで、視聴者に人を愛する難しさや、愛とは何かについて、想起させるような描写が多々あり頭の回転が止まらない。愛やテクノロジーが片方を凌駕するのではなく双方の共存がうまく伝えられている作品であった。

現在台頭してきているウエラブルデバイス(Apple WatchやGoogle glass)の次はインプラント型になっていくと予想できる。アメリカなどでは既に、鍵の開け閉めを行うチップや電子マネーが人体に埋め込まれている。これは人間の自我は存在するが、確実に人体を拡張する技術でもある。
それらを考慮すると、この作品はフィクションでありながらも近い未来を想定したリアリティのある作品であるという印象を受けた。またラストは単に、人間か人工知能かといった優劣的な話ではなく主人公の本来の感情論とヒロインとの関係性がまとまっており、締まりの良いラストシーンであった。
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