チッコーネ

ミステリアス・スキン 謎めいた肌のチッコーネのレビュー・感想・評価

5.0
『ショタコン』という、同性愛と小児性愛が混在する性癖の犠牲となった少年たちの成長を描く作品なのだが、本当に素晴らしい出来。
当事者に胸に去来する感情の動きやトラウマを多角的な視点で描き、浄化へと導いていく作風が非常にユニークである(※ただし、原作あり)。

また田舎町に倦むとんがった若者たちへ向ける眼差しの優しさは、監督一流。
刹那的で内向的で、そして美しい若者たちは、クリアポップな画面の中であどけなく生き急ぐ。
彼らの絆を描く繊細なタッチは、唯一無二。
演出にドクドクと息づくニュー・クイア・シネマの命脈を感じるたび、こちらの涙腺は緩む。
90年代にヨーロッパや中華圏を震撼させた青春映画の新潮流は、「全方位否定」を手放す成熟を身に付けたうえで、確かな洗練を見せていた。

しかしストリートやゲイコミニュティに根差したどぎついデティールは、健在。
キャトルミューティレーションとフィストファックをシンクロさせるという発想は、Z級ポルノの製作者でさえ映像化しようとしないだろう、クール!

オリジナルスコアは、シューゲイザーの祖であるロビン・ガスリー(とハロルド・バッド)。
CURVEが流れた時、1992年の夏休みにフラッシュバックしてしまった…。

なお本作は数年前にやっと国内初ブルーレイ化されたのだが、約7,000円という価格。
中古で少し安く入手できたものの、その高額にはかなり腹を立てていた。
しかし、鑑賞後の感想は一変!
個人的には、それだけのお金を払ってでも観る価値ありの、永久保存盤になった。