ゆべし

Life during Wartime(原題)のゆべしのレビュー・感想・評価

Life during Wartime(原題)(2009年製作の映画)
3.0
現代アメリカ社会の負け犬や倒錯した変人キャラをブラックユーモアで描く作風のトッド・ソロンズ、この作品ではユーモアは薄め、割と直球で「内なる悪魔」を抱えて悩み苦しむ人々を描いている。
ペドフィリアで性犯罪を犯し逮捕された後に出所する中年男ビル
ビルの元妻で今は新しい恋愛を求めるシングルマザーのトリシュ、父親がペド犯罪者だと知り父親と距離を置く大学生長男のビリー、性について混乱する小学生次男の子供ティミー。トリシュの姉妹2人もそれぞれ倒錯性欲に悩む男性たちとの過去がある。
それぞれの人物が身内の許し難い罪と向き合って、どう「赦す」のか?「忘れる」事は正しいのか?過去から逃避しながら葛藤する彼らの感情を曝け出し突き詰める脚本が素晴らしい。フロリダの白人中流サバービアを捉える映像はカラフルで美しくもあり人工的に誇張されてグロテスクでもある。鑑賞後は「戦時下の人世」という題名の意味を噛み締めさせられる。
ペドフィリアという禁忌的なテーマ故に、ソロンズお得意の皮肉ブラック・コメディでは扱いにくいだろうから、笑いも少ないし(無くは無いけど)エンタメ性も低い。日本ではDVDすらスルーされ無かった事にされている(ソロンズ他作品はすべて公開されてるのに!)。
欲望や逃れられない過去と真摯に向き合って葛藤するキャラクター達は皆とても誠実で愛らしく人間味に溢れる素晴らしい作品だと思います。
デヴァンドラ・バーンハートが歌うエンディング曲"Forgive and Forget"は心に染みる。
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