ゆい

ハンナ・アーレントのゆいのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.3
ハンナ・アーレントに対する興味が、より一層深まる映画でした。ハンナの言葉や周囲とのディベートが、ハンナの内側に秘めているものを表出させていると感じました。

自身が被害者でありながら、視点をそこに置かず徹底的に哲学的に客観的なものの見方をしていると見える反面、ハイデガーとの複雑な関係がそのような発言をもたらしたのではないかと感じる、女性としての一面。この映画からはそんなハンナが垣間見えている。
周囲の反発が顕著で身の危険を感じ涙を流す場面は、ハンナの複雑な哲学者であり被害者であるが故の、単純な人間的苦悩を感じる瞬間でした。

実際のアイヒマン裁判の映像も組み込まれ、その映像から感じる緊迫感がより一層この映画を引き締めている。そして、もっと広く深い戦争の闇を知る必要があると感じた。表面的に『知っている』だけでは、わかりえない闇がある。それだけ多くの人間の心に傷をつけた戦争であることを、知らなければならないのだと反省した。

自分が学び、知ることで、さらにこの映画への理解が深まるだろうし、観るたびに深みが出てくる映画である。
ゆい

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