あや

ハンナ・アーレントのあやのネタバレレビュー・内容・結末

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

個人的に凄く興味があるテーマ。
「悪」とは何か。
アイヒマンのやった事だけを考えれば、彼を「悪」と捉えるのが普通だと思が、主人公はそれに疑問を抱く。本当に彼は悪魔なのか?

「思考を停止することは人間であることを拒絶していること」

彼は思考を停止した。人間であることを拒絶した。彼自身は凡庸な人間に過ぎず、ただ上官の命令だけに従順にしたがっただけに過ぎない。彼の「悪」とは思考を停止したことではないかと。(偽名で潜伏していた先で素性がバレる決め手となったのがアイヒマンの結婚記念日に奥さんに花束を買っていたからと言う事実がある)

「善良な人間こそ一番の悪人である」という言葉に現れるように、善悪は裏表であり紙一重だと改めて感じた。

個人的にはドイツ国民がヒトラー万歳という風潮から敗戦へと向かい、アウシュビッツで行われた事が明らかになった後、ヒトラーに対する世論がどのように変わっていったのかがとても興味が湧いた。


「思考がもたらすのは知識ではなく、美醜を区別したり善悪を見分けること」

彼女の主張通り、彼女はアイヒマン=悪と先入観だけで決めつけるのではなく、事象について「思考」したからこそ、この考えに至ったのだと思う。
それはパスカルの”人間は考える葦である”という主張にも通ずるものがあるのかなと。

思考することについてこれほど重要視しているのは恩師の(ナチに加担した)ハイデガーからの教えなのかと思うと、、彼女自身も複雑な思いだったのではと思う。

自分自信がホロコーストの被害者であるにも拘らず客観的に物事を観れる冷静さには感服。
ただ理論としては理解できても、当事者にとっては到底受け入れがたい考えと言うのもとてもわかる。家族同然の友人達に、君には失望したと言われるシーンはとても心が痛んだ。でもどっちの気持ちもわかる。。どっちが正しいとかそういう問題ではないんだろう。
あや

あや