木野エルゴ

新しき世界の木野エルゴのレビュー・感想・評価

新しき世界(2013年製作の映画)
3.9
韓国ヤクザの最大勢力ゴールド・ムーンのソク会長が、裁判で無罪判決を受けたその後日、交通事故で急死した。頭を失ったゴールド・ムーンは後継者を決めるため、急遽臨時の取締役会を実施することに。現在の有力候補は華僑出身で中国マフィアとの取引全般を仕切るチョン・チョン(ファン・ジョンミン)、ソク会長の右腕で今なお古参に顔が効くイ・ジュング(パク・ソンウン)のふたり。

警察はこの機を狙い後継者争いに介入すべく動き出す。コ局長とカン課長(チェ・ミンシク)は、8年前からゴールド・ムーンに潜入捜査をさせていたイ・ジャソン(イ・ジョンジェ)を利用することを決める。今やジャソンはチョン・チョンの右腕として営業理事の立場にあった。

警察官としての任務と、兄貴分であるチョン・チョンへの義理との間でジャソンは苦しい決断を迫られる。


周辺の映画好きから高い評価を聞いていた韓国ノワールがAmazonプライムに来たので見てみた。なるほど極道モノの王道ストーリーでありながら、上手くサスペンスを融合している。ゴア表現もそこそこに、暴力と策略と人情が絶妙なバランスで成立していた。2時間越えの作品ではあるが、長さを感じさせない画面の作り方も見事。

特にチョンとジャソンの関係性の描き方が良かった。途中まで何故チョンが全てを投げ打ってでもジャソンを守ろうとしたか、本編ではほとんど説明されない(強いて言えばふたりとも華僑であるということだけ)。しかし、エンドロール直前のあのシーンを見れば納得できる作りになっている。というか、あのシーンを見れば視聴者はチョンとジャソンの物語を勝手に想像してしまう。想像できる余白があることこそ、愛される作品になるための重要なファクターだと思う。

しかもあのライターが着火しなかったのはハプニングで、ジョンジェのリアクションは素のものだったというエピソードを聞いてしまったら余計に愛着が湧くだろう。
木野エルゴ

木野エルゴ