特別なことは何も起きない静かなロードムービー。
トラックの運転手が上司に頼まれて、赤ちゃん連れの女性をパラグアイからブエノスアイレスへ乗せていく。それだけの物語。セリフも少なく、音楽もない。
どうにも気まずい車内。しばらく会話もない。
でも、無口で無愛想なオジサンが少しずつ会話し、打ち解けて、車内の空気が和らいでくる。
その様子があまりにもリアリティがあって、何も起きないのに見入ってしまう。
オジサンは低所得労働者で、女性もシングルマザーで暮らしぶりはよくないのだろう。
オジサンには息子がいるが、もう何年も会っていない。孤独の身。
3人は疑似家族のような時間を共にする。
ささやかに生きる2人のささやかで優しい時間。
赤ちゃんが可愛いくて、いい仕事をしていたなぁ。
オジサンが赤ちゃんを抱っこして嬉しそうにしてしている様子は微笑ましかった。
ラストに女性を送り届けて一人になった時、オジサンは家族がいない寂しさを改めて知ることになる。
人の温度が恋しくなったオジサンの新たな人生の始まりなのかもしれない。
恐らくアカシアの木材を運ぶトラックなのだろう。タイトルが素敵。
何も起きなくても、これも映画。
こういう作品、好きです。