kazマックスグローバーレッド

リアリティのダンスのkazマックスグローバーレッドのレビュー・感想・評価

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
3.8
ロシア系ユダヤ移民のホドロフスキー監督が少年時代に過ごした故郷トコピージャ。自身もユダヤ人差別を経験し、フリークスに愛着を持ち 宗教観と死生観が形成された経緯がよくわかる幼少期の体験をノスタルファンタジーに描いた自伝的映画。

「お金は血なり、循環すれば活力になる」
世界恐慌で揺れる1920年代 独裁政権下のチリ。ウクライナから移住してきたスターリン崇拝者で共産党員の父親ハイメに厳しく躾けられたアレハンドロ少年。不具者や小人、弱者に恩情をみせるアレハンドロとは逆に「神はいない、死んだら腐ってそれで終わりだ!」と罵倒する父ハイメは運命に翻弄され いつの間にか放浪の身になっていた。これはホドロフスキー版スクルージか?!

差別を受け自殺しようと海岸の岩場から身投げするアレハンドロ少年の心に語りかける現在のアレハンドロ老人。「君は一人じゃない、私がいる、未来の君はすでに君自身だ。苦しみに感謝しなさい、そのおかげでいつか私になる。君に私はまだ存在せず私に君はもう存在しない」
若い頃には人間誰しもつらい時期はあると思うし、そんな時にこの言葉は心打たれるだろうな。そりゃ監督も『ホドロフスキーの虹泥棒』みたいな心温まる作品だって作れるよ。

ただ『リアリティのダンス』はそんなまともな部分のホドロフスキーだけに留まらず、本来の奇人変人変態ホドロフスキイズムも炸裂。劇中で1人ミュージカルを披露してる巨乳オペラ母ちゃんの疫病をも癒すアブノーマル「聖水プレイ(祈り)」はこの映画で一番のインパクトだった。おかえりなさい 皆が知ってるホドロフスキー、そしてこれをやった女優さん、尊敬します。

父親ハイメを演じたのはホドロフスキーの実の息子ブロンティスで、彼は幼少の頃に出演した『エル・トポ』でもフルチン演技で、50歳過ぎて出演した今作でも未だにフルチンって…。ホドロフスキー監督、我が子にいつまでも何をやらせてるんだ。もし『DUNE』が実現してたらそこでもスッポンポンになってたかもしれないね。