自分で自分に優しい、ってよろしくない形容に思えるけどもこんなにも自分に優しい自伝ったらないでしょうよ……
いつものように作家性の爆発は元より、ホドロフスキー作品の断片が散りばめられているので過去作のジュークボックスみたい。作品それぞれが本人の経験をなぞって生まれてきたものなんだなってのをまざまざと視認できる。『サンタ・サングレ』を観た時もなんとなくそんな気はしてたけど「透明人間になりなさい」ってのは本当に母親に言われてたんだ……
23年振りの新作ってこともあって時代的な撮影機材の変化もあるのだろうけど、以前よりも色彩のけばけばしさが薄まって画面がポップになった気がする。この色彩感覚がめちゃくちゃ好きなんだろうて、次の画面がどう彩られてるのかっていう高まりだけでたぶん一生楽しめる。
いま死なずに生きてきた私がいるのだからどうか泣かないで過去の自分。嬉しかったことも悲しかったこともこれまでの思い出はすべて抱きしめてあげる、ってな感じに過去のトラウマを夢で包み込む素敵な療法。
特典映像のカンヌでの上映後舞台挨拶、たぶん現実では出来なかったんだろう父親との和解を作品内で出来たことに自分自身で泣いてしまう様子だったり、お母さんがオペラ歌手に憧れていたから映画でオペラ歌手にしてあげたんだ、て語るの可愛すぎかジジイ。
作品を含め人としてマジで好きだホドロフスキー。