Clara

42〜世界を変えた男〜のClaraのレビュー・感想・評価

42〜世界を変えた男〜(2013年製作の映画)
3.0
伝記映画。
野球、特にメジャーに関心がある人なら”42”という背番号でピンとくるものがあるかもしれない。ドジャースでは4/15に全員が42番をつける慣習があり、またこの番号は唯一の全球団永久欠番となっている。その理由は、本作の主人公であるジャッキー・ロビンソン。アフリカンアメリカンとして初のメジャーリーガーとなった彼は、厳しい差別と自身の短気な性格と闘いながら、大好きな野球に身を捧げ、殿堂入り選手となった。そして何より、全てのアフリカンアメリカンの希望の星となり、道を開いた選手だ。

先駆者が置かれる環境はたいてい厳しいものだが、南部アメリカでの人種差別のもとで白人に混ざってプレーすることは、厳しいというより命がけの行為。それでも彼は「やり返す勇気」ではなく、「やり返さない勇気」をもってやり遂げた。短気な彼が言いたいことを飲み込んで、冷静に対処しプレーで周囲を納得させることができたのは、愛する妻と彼に目をつけて導いた球団オーナーのブランク・リッキー(やり返さない勇気を持つように諭したのも彼)、専属広報担当になったウェンデル・スミスの存在も大きい。

次第に実力を認めて態度を改めていく監督やチームのメンバー達。一つのチームになっていく様子、ファンが増えていく様子は感動的だが、そうなるまでにどれだけ苦しい思いをしたかは正直想像もつかない。彼の勇敢さと周囲にも自分にも負けない心の強さには、頭が下がる思いだ。みんなの未来を築いたのだから。名だたる活動家達とは異なる方法で、社会を変える大きな大きな仕事をやってのけたのだから。

作品として一つ残念なのは、ジャッキーの野球選手としての能力そのものの凄さはやや感じにくいこと。とはいえ、プレーのシーンが下手なわけではないのでいいのだけど。

最後に、子供への影響力についてさり気なく言及していると感じた。周囲の大人がジャッキーを酷く罵れば、理由がわからなかったり、本当は応援したい気持ちを持っている子供たちも大人の真似をして罵るようになり、気づけばそれが当たり前のことになる。大人の責任、その怖さが見えた。それと同時に、子供たちの素直な心が、物事の本質を教えてくれる。
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