ゆうゆ

オスロ、8月31日のゆうゆのレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
4.8

かつて苦楽を共にした友人との
少しずつ噛み合わなっかったお喋り、
自暴自棄に蹴散らしてしまった
面接でのやりとり
繋がらない恋人への電話
会えなかった妹
無邪気に未来への夢を語る女性をまるで
遠い世界にいる人のように見ていた
硝子の眼差し
さいごまで反応のなかった
愛する人への電話

世間からひとり取り残されたような
佇まいの青年は
オスロの街を虚ろに彷徨いながら
移ろう季節の風を感じ疎外感を強めていき
夏の終わりの少し冷えた空気に身を震わせ
白い靄に包まれる

人との出会いを重ねるたびに
孤独やとりとめのない悲しみ、
虚しさに染った薄いベールを
彼は一枚ずつ纏っていった

やがて新しい季節を迎え入れる新たな
夜明けが訪れて世間が目を醒ますころ
開けたカーテンをふたたび閉ざした青年は
ピアノの悲しい音色にいざなわれ
絶望で覆われた殻の中に
小さくうずくまる
苦しみの笑顔に蓋をして
深い眠りに堕ちていく

まるで 決して羽化することのない
蛹のように



妹に会うため 仕事の面接のために
薬物の更生施設から街へと向かった
8月31日の彼の物語

平穏な日常の中でひとり取り残されていく
主人公の心の機微が丁寧に描かれてて
かつ情景描写の眩いカットの美しさが秀逸。
彼が死を意識しながら目に映る何気ない風景が
とてつもなく愛おしくきらきらして見える様子を
表現されてるような感じにも思えました

雰囲気が『サマーフィーリング 』ぽい
なって思ってたら、主演の男性が同じ人。
微笑んでいるのに心が泣いてるのが痛い
ほど伝わってくる、主人公の繊細な脆さが
すごく切ないです。
監督さんも異なるし テーマも真逆的に
違うのだけど どこか悲しげで憂いを帯びた
ような 同じ空気を感じていました。
好きな作品です
ゆうゆ

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