「人はコミュニケーションせずにはいられない」ある研究者が言っていた言葉だ。これはまさに本作のメインテーマであった。調査者の存在は、たとえ会話をしてはいけないという条件があったとしても、被験者の精神に何らかの影響を及ぼすことは間違いなく、調査者もまた影響を受ける。物理学的にモノには多かれ少なかれ重力があり互いに引き合っていることと同じように、人も相互作用の関係性の上に存在している。こう考えると、どちらかの影響を無しにすることは無理な話で、そこに諦めがついた時、被験者との対話にシフトできるのだろう。
主人公の調査者としての葛藤、調査者である前に一人の人間と人間の関係性が先行することはある意味自然なことであり、それを抑えて調査すること自体が不自然とも捉えられる。
少し長く感じてしまう構成であるものの、二人の距離の近づき方は非常に丁寧に描かれていた。
