猫脳髄

幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.5
同時代ホラーとしては後発組の東宝(※1)が、満を持して放つ本格怪奇映画。本作以降、周知のとおり「血を吸うシリーズ」として計3作品が製作された。

ストーリーはポーの「ヴァルドマアル氏の病症の真相」を下敷きにしている。また、演出はアルフレッド・ヒッチコックやハマー・プロの怪奇作品群、マリオ・バーヴァ作品を参考にしたと思しく、特に「サイコ」(1960)や「呪いの館」(1966)は大いにイメージソースになっているようだ(※2)。

セットの洋館は安普請(※3)だし、シナリオも大きな矛盾が目立たなくもないが(※4)、71分の短尺にまとめ上げてテンポがよい。小林夕岐子が当時まだ珍しいカラーコンタクトをはめ込んで亡霊役を演じるが、ほとんど見えていなかったらしく、焦点が合わない不気味な表情の演出に一役買っている。小林の母親役である南風洋子も終始無表情なのが薄気味悪い。コマ落としで小林がツッツッツッと迫ってくるクライマックスも見どころである。

わが国のホラー映画界が、70年代まで「怪談映画」の影を引きずるなか、洋風の本格怪奇映画をやってやろう!という意気込みが伝わる佳作。

※1 東宝と言えばまずもって特撮映画である。怪作「マタンゴ」(1963)のことは忘れていない
※2 オムニバス映画「世にも怪奇な物語」(1968)のフェリーニ編もあげられるかもしれない
※3 屋敷の全景は模型である
※4 例えば、全身打撲と内臓損傷でほぼ即死のはずの小林が、キレイな姿で自宅のベッドで今際の際を迎えている
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