トモヒコ

アメイジング・スパイダーマン2のトモヒコのレビュー・感想・評価

4.2
 マーク・ウェブ監督と言えば傑作「(500)日のサマー」や「gifted/ギフテッド」などのドラマ作品が注目されがちだが、エポック・メイキングなサム・ライミ版とMCUの間で影を潜めつつある「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ2作も、十分にマーク・ウェブ印が押された作家性の強い作品群だった。すなわち、すれ違う人間関係を描きながら、「止まらない時間の中で、信じられるのは自分自身の才能だけである」ことを繰り返し語り、主人公が才能をもって身を立てることで「自分が何者であるかを見出す」話を常にしているからだ。
 「(500)日のサマー」は建築家の夢を諦め無気力に働くトムが、出会ったサマーに一目ぼれし、彼女と恋人関係に収まることを一旦はゴールとしながらも、その夢は潰え、再び建築家としての道を目指すという、最近観た中では「恋雨」のような恋愛映画だった。その中で人との出会いや別れに「運命の力など存在しない。すべては偶然である」ことを喝破する。
 「アメイジング・スパイダーマン」に続く「2」でも、進み続ける時間の中で自分の行った選択が自身の人生を決定づける、人生を幸福に導くのは他者(との関係)ではなく自分自身の才能(をどう活かすか)であることを、アメコミの舞台を借りながら実は語っている。この「不可逆な時間と個人の才能」の話は失恋とかして信じられるものが無くなったときに効きそうで、「おれ好きなものがあってよかった~救われるわ~」と安心する一方、それでもつながりを求める気持ちのやり場はどこに探すべきなんだとも思う。
 「アメイジング・スパイダーマン2」はそんなマーク・ウェブ作品の、背中を押してくれる物語を堪能できるだけでなく、3D鑑賞を意識した壮麗なCG描出、前作以上に軽口を叩くピーター・パーカーの軽妙さとその影に潜む悲壮感、魅力的な悪役・エレクトロやライノ、さらに全編で異様な存在感を放つデイン・デハ~ンなど見どころが多すぎて語りつくせない(特にデイン・デハ~ン)。決して忘れてはならない意欲作であり傑作である。今秋の「ヴェノム」はこのリブート作品と企画段階から密接に絡まっていることを意識して観たい。デハ~ン
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