このレビューはネタバレを含みます
どんなに眠くても、198分間「寝てはいけない」と感じさせる気迫
今まで観てきた「何も起きない系映画」すべてを前フリにするラスボスみたいな作品
でも25歳が撮った作品であることもわかる ドランみたいな若さと完成度の共存
映像的演出をほとんど排した客観視点によっていつの間にか客席空間ごとジャンヌディエルマンの部屋になっている 3時間超をジャンヌと過ごした我々は最後の展開を当然のものとして受け入れる用意ができている
パターソンであり砂の女でありムシェットだった 上映期間中にもう一回観たいと普通に思ってる
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2回目 2023/5/9 at日仏学院
「ジャンヌ・ディエルマンをめぐって」を観るために再鑑賞
男性をひとり殺すことが彼女の人生に何をもたらすか?もちろん、世界を覆い尽くす「男性社会」という巨大なシステムにこの暴力はなんら影響を及ぼさない。むしろジャンヌ・ディエルマンはこのあと刑法による「正しい処罰」を受けて、死ぬまで社会不適合者の扱いを受ける(抹消される)。街を踏み荒らすゴジラの踵に向かってひとりの人間が全力の、しかし泣けるほど弱々しいパンチを放つ、ゴジラは足に一瞬の痒みを感じて振り返り、そちらに一歩踏み出して、感情を制御できずに無意味な打撃を加えてしまったその人間を認識すらせず踏み潰す。
英国映画協会が10年ごとに発表する《史上最高の映画100》でこの作品が2022年に突如36位から1位に浮上したこと、それに対し世界的に著名な男性映画作家がはっきりと苦言を呈したこと、ひっくるめて今の世相のサムネイルのようで非常に興味深い。ゴッホとかの「死後、再評価される」ってこういう感じだったのかな