イチロヲ

荒野のダッチワイフのイチロヲのレビュー・感想・評価

荒野のダッチワイフ(1967年製作の映画)
4.5
誘拐された女性の救出任務を請け負った殺し屋(港雄一)が、かつて自分の恋人を殺害した真犯人が、背後に潜んでいることを察知する。フィルム・ノワール路線の低予算ピンク映画。山下洋輔カルテットが劇伴を務めている。

「登場人物の脳内世界にダイブする」というモチーフを扱いながら、実験的演出を盛り込んでいる作品。若かりし頃の港雄一が逸脱したアウトサイダーを完璧に演じきっており、普通の日常生活では到底浮かび上がらない、珍妙なレトリックが連発する。

ドラマ内では、悪党(メンバーに麿赤兒がいる)を追い詰めていく過程と、世間ズレした娼婦との交流劇が展開。トントン拍子で仕事が進んでいき、「あれれ?」と思ったところで、虚実不明瞭な空間に陥る。生死の境目を往来しているような雰囲気が絶品。

しかし、現行の国内版DVD(アップリンク版)は、画面の左右がトリミングされており、疑似ストップ・モーションの演出意図などが、鑑賞者側に伝わらなくなっている。マニアックな映画ファンは、ワイズ出版のVHS版か海外版Blu-rayで鑑賞するべし。
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