さわら

ある過去の行方のさわらのレビュー・感想・評価

ある過去の行方(2013年製作の映画)
3.0
3歩進んで2歩下がる、1歩進んで2歩下がる。言うならばそんな感じで、話がなかなか展開しない。いろいろ考え思考を巡らしているはずなのに、妙に退屈なのは何故だろう。再婚相手の自殺の死因を巡るというテーマ、それがいくら多重的に語られようと2時間は少し厳しい。
そもそもフランス人特有なのか、あのヒステリックなまでの自己主張・自己弁護になかなか乗り切れない。メールを誰が送ったとか送ってないとか、死因は自分と関係あるとかないとか。結局、恋仲になった(妊娠までする)マリーに原因があることは変わりないから!なのに、マリーは自分の関与をどうしてあんなに否定するの(自分の読み取りミスか)?それに自殺の要因もわからず再々婚とか、全く釈然としない。さすが自由と博愛の国のやることである。
それはともかく、テーマ設定とその一貫性は見事としか言いようがない。冒頭の空港の場面から一貫して語られる、「コミュニケーションの不完全さによる悲劇」。知っているようで知らない、伝えているようで伝わっていない。悲しいまでの心の距離やもどかしさを、アーマドとマリー、そしてマリーとサミールの間で終始感じた。そんななかで、アーマドと子供たち、特に血の繋がらないサミールの息子(名前忘れた)との交流に救われる。そして何よりラストシーン。言葉なくとも伝わる心のつながりが、言葉を介してのコミュニケーションより強く確かなものというのはなんと皮肉なことだろう。そこがとても印象的だった。
常に大人たちに引き回され、四苦八苦する子供たち。僕がリシューだったら、100%ぐれて髪とか金髪にするだろう。そして教室の窓ガラスを割ったり、盗んだバイクで走り出したりしちゃうにちがいない。子供の育つ環境ってめっちゃ大事、これ絶対!