CHEBUNBUN

マイルストーンズのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

マイルストーンズ(1975年製作の映画)
3.0
【政治の時代の終焉の先にある再生】
ロバート・クレイマー映画を観たくなってDVD-BOXを買った。今回観た『マイルストーンズ』は一見、ドキュメンタリー映画に見えるが、実は特殊な過程で作られた劇映画である。一冊のファイルを半年以上保管し、そこに描きたい要素を集めていく。その後、50ページ分を小包にして相方のジョン・ダグラスに渡し整理する。そこから数ヶ月放置した後に議論を行い脚本を練り上げたとのこと。

実際に観てみると散文的でありながらも緻密に編み込まれた政治の時代の終焉を目撃することとなった。

60年代の政治の時代が終焉を迎える。あるものは逮捕され、出所すると変わり果てた世界に困惑する。別のある者は、60年代は何かと反芻しながら実存の危機と対峙する。3時間以上にかけて暗い自問自答の旅が描かれる。今のようにインターネットで仲間が見つかるような時代ではない。あの頃の熱気を失った時代に、燃え尽きてしまった人たちはモラトリアムな空気感の中で仕事を探したり、ろくろを回したりしながら前へと進む。対話を行なっても互いにモヤモヤしており、言語化もできない。次なる革命の準備期間なのか?それとも永遠に「あの頃」は戻ってこないのかと不安になりながら歩き続ける。映画はクライマックスにかけて出産のシーンを描く。これが感動的である。それは当時の人と同じぐらいのひりついた時間を共有した我々があの出産をもって希望を見出すからであろう。散文によって紡がれる骨太なロードムービーであった。
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