さゆ

プリズナーのさゆのネタバレレビュー・内容・結末

プリズナー(2007年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

つらい
修復的司法を題材として、現代で生きづらい人たちに焦点を当てたお話だった

被害者側主人公であるアナの息子ジェシーがADHDだったこと、アナの結婚生活が金銭的余裕のないものであったこと、
純粋に修復的司法だけの話ならこの設定である必要はなかったんじゃないかと思う

誰しもがソール(演ジェレミ)になる可能性があり、逆にソールが救われる道だってあったはず
ソールが物理的に救われて欲しかったソールつらすぎる
こんなソールを救えない社会が悪い
人間は愚か

アナだって被害者遺族ではあるが自分の息子と他人の命を天秤にかけて自分の息子を選んでいるし、
結果その場でソールに撃たれた店員は助からなかったけどもし搬送されて救命できるか否かのギリギリな状態だったら、アナの要望で助かるはずの命が助からなかった可能性がある
ただ通報しないでほしいという要望を「わからない」と貫き通すわけでもなかったところで、善の心、良心が表現されていてこれはソールもそうなのが余計につらい
誰しも善性と悪性の両方を兼ね備えている

ソールは100%悪人ではない、むしろ40か30、見方によってはふつうの人間だったんじゃないか
病気の父親の面倒を見ているし、人質にとった子供にずっと声をかけているし、母親に子供は返すから・10分だけと言っているし、事故のあともはじめは子供を救いだそうとしている
少なくとも優しさはある

強盗だって計画的ではまったくなく、レジでポケットにたまたま拳銃があることに気づいてしまって衝動的にことを起こしている
強盗やってる最中の表情が複雑なソールの心境や状況、性格を表していてジェレミすごいしつらい。
借金をして、返済するために客のもの売ってクビになったりギャンブルで取り返そうとしたりそれでまた借金をしたり、友人の建設的なアドバイスを聞き入れられなかったりという行動は思考や判断力の欠如、精神的な弱さが全てソールの責任なのかと思う
現在ソールのようになっていない人間はたまたま運が良かっただけな人間もたくさんいるはず
特に金銭的困窮はほんとのほんとにIQを低下させるしメンタルにもめちゃくちゃよくない
これは経験したことのない人間にはわからない人もいるかもしれないけどほんとにそう
長期的な視野が持てないから短絡的な結果・解決方法、それ以外選べなくなる

映画が始まる前からソールがじわじわと追い詰められていって転落していくさまがほんとうに苦しい
牧師への発言からきっと普通の家庭じゃなくて、社会のはじっこに陥りやすい環境だったんだろうなと思うと余計につらい

現代でうまく生きていけない人間がいて、社会から弾き出されてしまったり司法で罰せられたり、
それって生きづらい人間が悪いんじゃなくてその人間を生きづらくさせている人間社会に問題があるけど
人間や集団には限界があるので現ルール内に収れない人間は追いやるか殺すしかない
社会のいびつな穴

ジェシーだってもしかしたら成長したらソールになっていたかもしれない、このまま不遇が続けばアナだって、と容易に思わせられる

アナの真実じゃないかもしれない、でも許す、と言う言葉
「赦す」っていうのは赦すその人が生きる上で最大の救いだよなと思う
逆に許せなければいつまでもそれにとらわれることになる
アナが、ソールがこれまでどのように生きてきて、どうしてそういう行動をとってしまったのか、想像してアナ自身を納得させて自分を救った
けど、それが事実である必要はない そこにも人間の弱さというか賢さというか強さというか、人間の脳機能というか、そのあたりが表現されている

逆に悔いているソールは被害者たちであるアナやジェシーの生活を想像したけれどわからないという
わからないよな…わからんよ…隣に立っている友人や家族のことだって100%理解できないのにわかるわけがない
牧師に聖書が教義が理解できないと言うソールは、最後に被害者家族から赦されて死刑が施行されていく時の表情が怯えている悔いているようで穏やかであるようにも思う
死刑直前で殺してしまった被害者遺族に許されるソール…
キリスト教圏にあって人を許すのは神ではなくただ人でしかない、人しかできないというメッセージも感じたけど考えすぎかもしれない
けど私はそう思う 人だよ
さゆ

さゆ