くりふ

ビザンチウムのくりふのレビュー・感想・評価

ビザンチウム(2012年製作の映画)
3.5
【少食ヴァンパイアは二世紀悩む】

出だしから前半にかけ跳ねるように面白く、劇場でみたかったと後悔しかけたら…終盤に向けあらら失速。前作『オンディーヌ』に近い残念感でした。映像力はこちらの方が強烈でしたが。

ヴァンパイアのモラトリアムに共感できなかったのが一番残念かな。少女で時を止めたシアーシャ演じるエレノアが、ホントこういうことで延々、200年も悩んでるの?とどうにも納得いかなくて(笑)。

都度、社会に馴染むから生きられたのでしょうが、逆に馴染み過ぎて背負った時の重みが感じられない。自分がヴァンパイアと思うのは妄想だ、と決めつける教師の視線と観客のそれとをダブらせる狙いもあるようですがピンと来なかった。

本作においては、神秘性の欠如を欠点に感じます。同ジャンル『ぼくのエリ』の方が、その点からも巧かったと思いました。

そもそも発端となる、ジェマ・アータートン演じるクララがヴァンパイアを「選ぶ」ことに逡巡しないんですよね。永遠の命より、劣悪な環境を変えるチャンスと捉えた面が大きいように見えますね。

ビザンチウムというモチーフは、イェイツの詩「ビザンチウムへの船出」から取ったそうで、そこにあるのは老いることの苦悩を、理想郷に行くことで乗り越えんとする決意、なんですが、しかしクララはそんなことまるで気にしていないふうですねえ。

クララ、好きなんですけどね。ジェマさんはまだ20代ですが、崩れたオバサンぶりが巧く、熟女の肉感ぶるぶるさせてるのも大変けっこうだし。でも一体、あなたにとって200年はなんだったの?いったい何のため生きて来たの?と聞きたくなっちゃうんですよね…。

しかし200年娼婦やってきたってスゴイよな。どこまでテク磨かれたのやら。体売らなくても、吐息でフィニッシュまで、とかできんじゃないか?

で、一方のエレノアは、犬が自分の尻尾を噛もうと回るように、200年ぐるぐるぐるぐる悩み続けている感じなんですよね。…飽きないのかなあ?

あと、本作内での吸血ルールがよくわからないですね。ひと月に一度くらい吸っときゃ大丈夫そうに見えましたがどうなんでしょう?それならわざわざ、ゆきずり殺人しなくても血液入手できそうですけどね。

映像の鋭さはとてもよかったし、元は女性の書いた戯曲、というのがよくわかる感覚で、女たちが面白かった。逆に男は添え物ぽかったですけどね。

せめて、後半の停滞をもう少し刈り込んでくれれば…と残念なかんじです。

<2014.5.2記>
くりふ

くりふ