イチロヲ

癒しの遊女 濡れ舌の蜜/墨東綺譚のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
旧・玉の井私娼窟の情景を反芻している初老の作家(那波隆史)が、昔の雰囲気を残すチョンの間で若い娼婦(早乙女ルイ)と知り合う。永井荷風・著「墨東綺譚」を現代アレンジしている、オーピー配給のピンク映画。

昭和初期の玉の井界隈を舞台にしている原作を、都市化が進んだ現在の街並みに置き換えて、リライトしている作品。懐古主義者である主人公作家が、変わりゆく街並みに思いを馳せながら、のらりくらりと行動する。

ヒロインの早乙女ルイは、旧・玉の井と地続きの世界で暮らしている、訳ありの娼婦として登場。同時に、作家が創作する劇中劇というかたちで、学校教諭(牧村耕次)とデリヘル嬢に変身した元教え子(里見瑤子)のジタバタ模様が展開される。

「時代の変遷」に対する鎮魂歌をうたい上げながら、人間の性的行動の本質を説いている作品。「ハッテン場と化した成人映画館で、本作を観ている自分」を客観視しながら、沈思黙考する機会を与えてくれる。
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