芹沢由紀子

ペコロスの母に会いに行くの芹沢由紀子のレビュー・感想・評価

ペコロスの母に会いに行く(2013年製作の映画)
4.5
あ~、いい映画みたなあ!ありがたや。
合掌したくなるくらいよかったです。
自費出版されたコミックが評判を呼び、ヒット作になったマンガが原作の映画です。

ネタバレあります、ご注意ください。



主演の俳優さん、知らなかったし、原田貴和子も代表作が何か知らないけど、とにかく面白かったし、泣けました。

冴えない中年(デブハゲ無職寸前)主人公のお母さんが、認知症が進んでゆくだけの序盤は、退屈なんだけど、やたら主人公の生きざまがタフネスなのでじめっとした悲壮感はない。

やがて認知症が進んで施設に入るあたりから物語はガンガン進んでいき、母親の人生の走馬灯がよみがえる。
施設で働くスタッフ、入居者みんないい。
竹中直人が出てくる中盤からは俄然面白くなり、いつしか私はこのファミリーの一員になった気で没入していました。

最初は赤城春江の夫が加瀬亮って‥‥と納得できなかったけど、だんだん加瀬亮演じる夫の人間性がじわじわ見えてきて、自分も昭和中期にタイムスリップした感覚に見舞われ…

戦前の長崎の歓楽街っていうとなんか「長崎ぶらぶら節」とかを彷彿とさせる艶っぽさがあるし、原田知世(主人公の回想の中で、原田貴和子の対極的なキャラクター)の勤めていた女郎屋の女将さん、めちゃめちゃ美人で映画の中で浮きまくりだけど、すごいよかった。

ラストの橋の上のシーン、もう私は声を上げて泣いていました。

女性として、この作品を味わえて本当に幸せと思えたし、同じ女性として、淡々と運命を受け入れて生きていくしかない人生にも、こんなに輝く瞬間がたくさんあるんだ!と、まるで曇っていただけの未来図に、漠然とした希望の光を感じさせてくれた、久々に心が動かされた作品でした~(べた褒めしすぎかな)


テンポ、構成、編集、キャスティング、全部が整っていて、非の打ちどころのない作品に思えます。


自分はにほんの片隅にかろうじて棲息できてる冴えない漫画家ですけど、この原作者の方のように、こんな素晴らしい作品を残してから死にたいものだ、と夢が膨らむ映画でした。
芹沢由紀子

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