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ペコロスの母に会いに行くのまぴおのレビュー・感想・評価

ペコロスの母に会いに行く(2013年製作の映画)
3.6
【介護と認知症問題をそっと暖かく包み込む物語】

長崎在住の漫画家、岡野雄一さん(62)と母光江さん(89)の自身の経験から綴られる4コマまんがの実写映画化。
母ミツエが認知症になることからこの物語は始まる。
似たようなテーマで石井監督の「ぼくたちの家族」はボロボロと記憶を失っていく母とともにボロボロになっていく家族と再生までを描いた作品となるがこれもおなじ認知症をテーマにしているのにどこかほっこりとした空気が全体像を包み込んでいる。

テーマは深刻で重く同じ母の不遇を描きながら作り手によって観る感想がここまで変わってくるとは...
とにかくこの家族はホッとさせるのだ。それは介護や認知症に生きる老人たちの行動を明るく穏やかに笑えるかたちでハゲチャビンを交えて表現しているからだ。

認知症になっても家族の大切だった日々は忘れない。よりそれは身近になっていく。
昭和という時代を懸命に生き抜いてきた母は老いた分だけ樹木が年輪に記憶を刻みこむように過去との対話を重ねていく。
すでに他界している夫、そして幼なじみの友人、若く病気死んだ妹の思い出と共に...
辛く厳しかった戦時の出来事も過ぎ去った今となってはとても懐かしく暖かい。

さてタイトルにもある「ペコロス」とは直径3.5cm程度のミニたまねぎのことを指す。
主人公のゆういちのハゲチャビンの頭がそう見える事から自虐的にペコロスと名乗っているようです。
このたまねぎを密植栽培して生長を抑えながら育てていきます。単位面積あたりに普通のたまねぎの10倍近い苗を植えるので当然労力も、普通のたまねぎの10倍近くかかります。
親にとって子供って子供が思ってるより何倍も労力がかかるもの。
大人になってふと母親のこと考えます。まだまだ元気ですが実家に帰ると嬉しそうに出迎えてくれます。

そして自分の母が介護にかかるのも遠い未来ではないでしょう。
ご本人である光江さんは2014年8月24日に91歳でご逝去されました。
うちの母親もいくつまで生きるかわかりませんが少しでも長く笑顔を見ることができたらなと思えるような作品でした。

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