Osamu

標的の村のOsamuのレビュー・感想・評価

標的の村(2013年製作の映画)
4.1
こんな悲しいドキュメンタリーは観たことがない。

沖縄県東村・高江は米軍基地に挟まれた地区。その米軍基地でのヘリパッド建設計画をめぐり反対運動をする住民と、それを排除しようとする何者かを映すドキュメンタリー。

沖縄と米軍基地に関するドキュメンタリーを観る時、デモ現場で相対する反対住民と機動隊員、警察官あるいは工事従業者との対立として観てはいけない、ということを過去に観たドキュメンタリーから学んだ。

機動隊員らは職務を遂行しているだけだ。彼らが悪いわけではない。ただ、彼らが後ろにいるものを意識して虎の威を借る狐のように振る舞う姿は猛烈に悲しい。そして、そんな彼らとは闘いたくもないのに闘うしかなく、でもいくらやっても本来闘うべき相手が出てこない虚しさに泣く。

充分な客観的根拠を提示せずに「アメリカと日本政府の陰謀だ」と感情的に言い切るところに「これはちょっと気を付けて観た方が良さそうだ」と思いながら観ていたが、最後はこれもアリだと思った。この映画は、勝ち目の無い虚しい闘いを強いられた沖縄の叫び声なのだと感じたから。渾身の悪あがきなのだ。であれば思いっきり突き抜けてしまえばいい。
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