紛争のアフガニスタンから脱出した男の話。登場人物への安全配慮だと思われるが、ドキュメンタリーなのにアニメーション。
登場人物が本人であることを保証するのがドキュメンタリーだとしたら、アニメーションで表現することでその保証は薄まってしまっているが、映像表現はなかなかおもしろかった。
ドキュメンタリーで過去を映像表現しようとしたとき、実写の芝居を入れたり、そこだけアニメーションを使う手法を見ることがあるが、現在のシーンとのギャップが生まれて違和感を受ける印象がある。それがこの作品には無く、映像的なまとまりの良さを感じた。ところどころでアクセントを付けるVFXも心地良い(冒頭の方で流れるa-haの『Take on me』のPVを思い出させる)。そして、地味に気に入ったのが、過去の実写映像を、こじんまりとしたサイズで角を丸くしてはめ込んでいるところだ。アニメーション主体の作品を控えめな立ち位置で支えていて、作品にとてもマッチしている。
話の内容は重かった。
国家レベルの大義に人権が凌辱されるのは許し難いが、それを避けるために人々が他国に逃れようとしても、密入国を手引きする営利事業者がいなければ難民申請の窓口にもたどり着けないという現実には絶望してしまう。
そして、その絶望の当事者が他国に受け入れられた後も引きずる、後遺症とも言える痛みに呆然とさせられる。
