Osamuさんの映画レビュー・感想・評価

Osamu

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ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに(2019年製作の映画)

4.0

サーロー節子の話のようでそうではない。ノーベル平和賞を取ったICANの話でもない。原爆で亡くなった人々の話だ。

彼らに想いを寄せる映画だ。

核の抑止力の理屈は分かるような気もするが、彼らに想いを寄
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夏時間(2019年製作の映画)

4.2

夏休みのおじいちゃんの家。少女の父は母と離婚している。仕事もうまく行っていない。

映画にありがちなシチュエーションだが、描き方はありがちなものではなかった。

分かりやすい物語は語られない。観客に「
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天国にちがいない(2019年製作の映画)

4.2

スレイマン監督の観察者としての視線で描かれている。

敢えて全体の意図を提示せずに断片を集めてつないでいるのではないか。

スレイマンの正面からのカットの連続。観客は観察者としてのスレイマンの観察者と
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ガルヴェストン(2018年製作の映画)

4.0

たまたま居合わせただけの見ず知らずの者を見捨てない。自身の絶望の中で他者の絶望を見て、そこからの救出に自身の希望を得る。
「いくつになってもやり直せる」。励ますためにうなづいた言葉に自身が励まされて行
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Love Letter(1995年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

人が人を思う美しさが描かれている。

死んだあの人が昔住んでいた、今は国道になった住所に宛てて手紙を書く。届かないはずだった手紙の返事が来る。おかしいと思いながらも手紙の交換が続く。この美しい設定に惹
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東京公園(2011年製作の映画)

4.0

人物造形がすばらしく不格好。自身の欠落に関する迷走と決着を、輪郭を見せずに真ん中の方から見せる描き方に引き込まれた。

他者と共に生きるとは何か。カメラと公園と共に、そんな哲学が作品を貫く。

観た者
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春を告げる町(2019年製作の映画)

4.0

福島第1原子力発電所から20キロの町の今を生きる姿を描いている。

被災地の今を考えるとき、被災時に立ち帰りたくなる。今こうなのは、その時に何が起きたからなのかと。そういう映画はたくさんあるが、この映
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ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男(2017年製作の映画)

4.0

ボルグの苦しみをひたすら見せられる。そしてマッケンローとの伝説のウィンブルドン決勝戦へ向かって行く。

スーパースターの影の部分を明かす作品のようで、強くて弱い者が同じ痛みを持つ他者に出会えた小さな喜
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プリズン・サークル(2019年製作の映画)

4.0

何かにおびえ続け、安心して身をゆだねられる場所を持てなかった者たちが犯罪者となり、刑務所内の教育で回復しようとしている。

自身の中にあるものを語る機会が無かった者たちが、語り合うことで変わっていく姿
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どこへ出しても恥かしい人(2019年製作の映画)

3.7

ミュージシャンであり、画家であり、そして何より競輪ギャンブラーである友川カズキさんの日常が映されている。

おもしろい人だ。でも、映画としては物足りない感じがした。苦しみがあまり描かれていないからか。
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だってしょうがないじゃない(2019年製作の映画)

4.0

自身も発達障害と診断された監督が発達障害の伯父まことさんと関わるドキュメンタリー。

撮る側の監督が撮られる側にはみ出していき、主要な登場人物になってしまう、という少し変わった趣き。セルフドキュメンタ
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精神0(2020年製作の映画)

4.0

精神科医の山本昌知さんが引退する最終盤を映す観察映画。

12年前の作品『精神』では患者にひたすら寄り添う姿を観たが、この作品では妻に強く寄り添う山本さんを観た。その絵面は映画にするにはいささか平凡に
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転校生 -さよなら あなた-(2007年製作の映画)

4.2

水平が少し斜めに傾いている。特別な空間を観ていることを意識させる。

少年と少女の体が入れ替わる物語は、自身の痛みを相手の痛みに見出す、いわゆる「投影」を表現しているのかもしれない。「投影」が起きてい
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オリーブの樹は呼んでいる(2016年製作の映画)

4.2

昔、父親が売ってしまった祖父の大事なオリーブの樹を取り返しに行く話。

無計画で、嘘で仲間を巻き込む馬鹿な女。ただ、祖父が回復してほしい、という彼女の思いは周囲の人間の何かを変える。知恵と勇気で困難を
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もうひとりの息子(2012年製作の映画)

3.8

赤ん坊が入れ替わって18年後に分かったということ自体が受け容れ難いのに、それがパレスチナの地に住むアラブ人とユダヤ人の家族の間で起こるという悶絶。

もっと難しいはず、と思いながらも希望を受け取った。
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女神の見えざる手(2016年製作の映画)

4.0

善と悪が同居しているような女性を描いている。物質主義の塊のように見えるが、金や地位とは全く違うものを求めているのではないかと思わせる瞬間がある。

極端に寄せているようで、そうではないところがおもしろ
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誰も知らない(2004年製作の映画)

4.2

子どもたちの自然な演技に驚かされる(「子どもたち」にはYOUも含まれる)。

社会から隠れて暮らす者たちは、隠れなくとも社会から見えない存在だった。

賞味期限切れの弁当を与えてくれていた店員がいたと
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歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

4.2

家族という他人のさみしさが描かれている。そのさみしさは、秘密を持って生きるということなのかもしれない。一方で、他人でありながら相手の何かが自分の中に蓄積される不思議も感じさせる。

物語は語らず断片を
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(2017年製作の映画)

4.3

映画に音声ガイドを付けるという仕事に興味が湧いた。その仕事の奥深さと芸術性に感動する。

映像を言葉に変換するということ。その変換に必要なものは何か。それはこの仕事特有のものではなく普遍的なものなので
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ユキとニナ(2009年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ユキとニナの演技がすばらしい。演技とは思えない自然さ。彼女たちの体から発せられる戸惑い、悲しみ、衝動、などなどを観る映画だと思う。

ただ一箇所、ユキの演技が崩壊するところがある。母親が激情する横で笑
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二重のまち/交代地のうたを編む(2019年製作の映画)

4.2

4人の旅人が東日本大震災の被災地で聞いた話を語る。

民話が生成されるプロセスを擬似的に進行させる実験的側面がおもしろい。

受け取ったものを誰かに伝えたいという衝動と、正しく伝えなければならないとい
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2/デュオ(1997年製作の映画)

4.2

演じることを意識させる作品。

ドラマにドキュメンタリーがぶち込まれているという作りがおもしろい。ドラマ部分の2人の会話は演技っぽく、ドキュメンタリー部分のそれぞれの告白はリアルな感触がした。

関係
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空に聞く(2018年製作の映画)

4.2

キャストとスタッフのクレジットの背景に映されたカット、厨房とその勝手口から見える風景がとても美しいと感じた。

監督の小森さんは震災直後に陸前高田市に移り住んだ時、自分の知性と感性で撮ることに躊躇いを
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風の電話(2020年製作の映画)

4.2

偶然すれ違っただけの人たちの優しさが描かれている。冒頭の玄関シーンから泣いた。

間をたっぷりととった演出がいい。役者は力量を相当問われたと想像するが、西島秀俊の演技が良く泣かされる。

三浦友和のパ
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冬時間のパリ(2018年製作の映画)

4.0

現実(リアル)とは異なる「もう一つの世界」を誰もが持っているのかもしれない。そこは自己愛を動力源として回る、都合の良い世界。

この映画の登場人物は、「もう一つの世界」を簡単に捨てているように見える。
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.0

金をつかむためには手段を選ばない物質主義の世界が、飽きさせないストーリー展開で描かれている。

「ニオイ」を使って差別意識を表現したり、坂と雨水の流れを使って経済的格差の傾斜を表現しているところはこの
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

4.2

捜査当局とマスメディア、それぞれの仕事の根底にあった差別意識や偏見の恐ろしさが描かれている。だだし、それら二者を完全なる悪者としては描いていないのは、特別な悪意が無くともこのような恐怖は起こり得ること>>続きを読む

さよならテレビ(2019年製作の映画)

3.0

テレビ業界の闇をテレビ局自身が暴く、という内容を期待させられたが、それを満たされることはなかった。

撮ってみたら闇が見つからなかったのかもしれないが、それならば中途半端なものを公開しないでほしい。あ
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ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

4.2

店主たちのちょっとした自己紹介や接客の様子を編集しただけなのにおもしろい。

客の表情や買い求める内容に物語の存在を感じる。店主たちが語る断片的な自己紹介からも物語の存在を感じる。ただ、存在が感じられ
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家族を想うとき(2019年製作の映画)

4.0

自己責任という「自由」が自分の首を絞め、気付かぬうちに支配者に尊厳を奪われていく。進化したテクノロジーは支配者の監視道具として最も効果を発揮している。

恐るべきディストピアが描かれているが、空想世界
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マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

4.0

結婚生活の終盤を映し、結婚の幸福と不幸を想像させる。離婚に向かう法的手続きが衝突を生むのを見せられ、夫婦が法的に裁定される恐ろしさと関係の危うさを感じさせられる。

結婚と離婚の話として物語は進むが、
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馬ありて(2019年製作の映画)

4.0

人の営みに関わる馬が記録されている。

極寒の空気の中に馬たちから吐き出される白い息が美しく、感動する。モノクロームの映像が輝いている。

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)

4.0

逃げて、逃げて、隠れて、生きる。

いくつかの善意によって生をつなぎとめたピアニストの奇跡。ドイツ軍人たちの悪意によって当然のように殺されていくユダヤ人たちの日常。善意と悪意、奇跡と日常が隣り合わせに
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読まれなかった小説(2018年製作の映画)

4.0

人間の分かりにくい部分を肯定しているように感じる。それは若者には嫌悪されるもののようだが、若者にも分かる瞬間がいつか来たり来なかったりするのだと思う。

そういうことが、果てしなく続く会話の連続からに
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i-新聞記者ドキュメント-(2019年製作の映画)

4.0

東京新聞社会部記者の望月衣塑子。菅官房長官の会見で、空気を読んで大人しくしている政治部記者たちの中で一人、問題を追求する質問を投げ続ける。

森達也監督はカメラに写り過ぎだと思うし、最後に言いたいこと
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8月の終わり、9月の初め(1998年製作の映画)

4.0

会話、会話、会話。
女と男、男と男の会話でああなったり、こうなったり。

分かれたカップルがアパートを売る話から始まるが、居場所に関する映画だと感じた。居場所を失い、探し、得る姿が映っていた。我々はそ
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