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捕えられた伍長のzhenli13のレビュー・感想・評価

捕えられた伍長(1961年製作の映画)
4.7
染み入るような作品だった。伍長役のジャン=ピエール・カッセルの飄然と見開かれた目が全編にわたって印象深くいとおしい。(にしても息子のヴァンサン・カッセルはよく似てる。)常に淡々とした可笑しみを湛えながら、捕虜収容所からの脱走という「意志」をどう貫いてゆくかがその目にある。ロングショットもそう。柔らかさに包まれた意志の深さ、豊かさが染み入る。それは国境付近の農夫とのやりとりや、橋の上での伍長と盟友パタンとの切り返しにも表されている。

反証としてのバロシェのシーン、彼の顛末が容易に想像できるだけに、またドラマチックかつ深刻な描写がほとんど無い作品だけに、それを映さずに男たちのカウントダウンと見えない彼の様子を解説する台詞で表され、涙が出た。あのシーンの男たちの出入りはサイレント映画を思わせる。サイレント的なアクションはそこ此処にみられる。駅の検閲から逃亡する伍長を撃った弾が乗客の脚に当たり、膝を抱えて落ちる彼を伍長が抱き止めるアクションの鮮やかさ。

『大いなる幻影』での、かつての貴族文化の残影を惜しむかのようなシチュエーションは姿を消した。ファウンド・フッテージを織り交ぜた編集で60年代の作品とは思えない様相ではあるのだけど、時代性を超越したルノワールの瑞々しさが溢れている。素晴らしい。
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