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アナと雪の女王のRenのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王(2013年製作の映画)
3.5
劇場鑑賞ぶりに再見。しっかり面白いし、ミュージカルアニメとしてもシスターフッドものとして出色の完成度で、爆発的ヒットも納得だと思った。色々な意味を込めて吹き替えで鑑賞。

方々で言われていることだろうけど、改めて自分の目で観てみてこれはアンチムービーだと確信した。

前提としてアナは間違いなく可愛い。可愛いし、はっきりとモテるキャラクターとして描かれている。そんな彼女が王子様(高貴な身分の男性)と庶民派・粗野な男性に挟まれるという『美女と野獣』や『アラジン』と同じ構造になっており、多くの観客はまたこのパターンかと鼻白む。大概はそのどちらか一方の男性キャラが当て馬となり、もう一方と結ばれて幕を閉じるのがお決まりだったし、プリンセス映画はそういうものだった。
が、今作はそれを裏切ることでディズニー史のターニングポイントを作ることに成功した。2人の男性キャラのどっちが当て馬だったとかの次元ではなく、極端な話、アナとエルサ以外全員当て馬という究極のシスターフッド。

「魔法の力を解くのは真実の愛」という『白雪姫』から代々受け継がれてきた大ベタ設定にも意味がある。今まで真実の愛≒シスヘテロの恋愛であったプリンセス映画を、真実の愛=血縁の姉妹と2段階くらい定義を拡張させて、お約束を真正面から破壊したことに意義がある。『アナと雪の女王』は、ディズニー歴代プリンセス映画の全てをフリにした「アンチ・ディズニープリンセス映画に挑んだディズニープリンセス映画」だ。

以上のように十分最高な映画なのだけど、作劇的な盛り上げはそこまで上手くいっていない。約8年ぶりに観て、中盤〜ラスト20分までの記憶がごっそり抜け落ちていたのもそう思った原因の一つ。ただ自分と似たような人は多いと思ってる。
序盤に『Do You Want to Bulid a Snowman?』『For the First Time in Forever』『Love Is an Open Door』などキャッチーな楽曲が詰め込まれまくっており、開始31分で訪れる『Let It Go』のシークエンスをピークにそれを超える感動・カタルシスが無い。そこから終盤まで緩やかに下降し続けていく感じがすごく勿体無いと感じた。
ただしディズニーは続編製作に際してこの点を含めてかなり反省&研究したらしく、その辺りを続編と比較して観るのも面白いかもしれない。

その他、
○ 実は楽曲単体で聴いたときには『Let It Go』よりも『For the First Time in Forever』『Love Is an Open Door』のほうが好き。特に後者。
○ ピエール瀧に代わってオラフの吹替を担当した武内駿輔、流石に上手すぎ。モノマネ番組などでもよく見る声優さんだけど達者すぎる。
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