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るろうに剣心 京都大火編のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

るろうに剣心 京都大火編(2014年製作の映画)
3.0
明治11年、鳥羽・伏見の戦いで没したと思われていた維新派の《影の人斬り役・志々雄真実(藤原竜也)》が生きていた事が発覚。京都の裏社会に潜り、維新政府の転覆を企て、勢力を増強させていた志々雄は、遂に《国盗り》に向けて動き出す。


◆るろ剣といえば京都編!(異論は認めます)

前作に引き続き大友啓史監督の下《稀有な実写化成功作品》の続編が製作されました。迫力のあるアクションシーンはそのままに、不殺の誓いを立てた緋村剣心(佐藤健)が明治の京都を舞台に大活躍!

剣心を苦しめた剣客・志々雄真実が登場する《京都編》は、原作でも一番熱くて、一番好きなパートです!負け知らずの剣心を悉く窮地へ追い詰めるカリスマ的ヒールの志々雄真実。BLEACHの十刃や、鬼滅の刃の十二鬼月など、後のジャンプ作品にも影響を与えた(と、勝手に思っている)志々雄配下の強キャラ集団《十本刀》。そして、江戸幕府側の黒歴史である京都御庭番衆。剣心に飛天御剣流を叩き込んだお師匠様。戊辰戦争から続く怨念が明治の世で激突する群像劇は、原作当初から見応えがありました。


◆野党相手には無双するものの…

尺の都合上、致し方ないこととはいえ、正直少し弛れました。アクションシーンが少ない事に加えて《剣心の挫折》というネガティブな部分にスポットが当たっていた事が原因ではないかと。

飛天御剣流を継承した最強の剣客・緋村剣心が、より良い国を作るためという大義の下、維新政府の人斬りとして暗躍した後ろ暗い過去。後悔と自責の念から《不殺の違い》を立て《逆刃刀》を手にしたことは既に前作で語られていました。

自らに向いた刃は、その身を切る事になる。
飄々とした面の顔とは裏腹に、危うい剣心の精神状況を体現した逆刃刀が今作では遂に折られてしまう。《殺さない覚悟なんて甘っちょろいこと》が、剣閃に明確な差として現れる。剣心の心とも言える逆刃刀を叩き折ったのが、志々雄真実ではなく部下の瀬田宗次郎(神木隆之介)というのが、巨大な壁として剣心の前に立ちはだかる。

前作で圧倒的な存在感を放っていた剣心が、今作ではメンタルブレブレでこれといった見せ場がほとんどありませんでした。


◆まってました!最強のヒール!

原作においても最強の敵として君臨した志々雄真実。幕末期から剣の腕前と頭の回転の速さは人斬り抜刀斎と同格とされながらも、冷酷なまでの野心を危険視され、維新政府の闇を隠蔽するために、戦争の混乱に乗じて葬られたはずでした。

体中を滅多刺しにされた上で身体を焼かれた志々雄。これで本来生きているはずはありません。劇中で、医師の高荷恵(蒼井優)が〝剣心はスーパーマンじゃなくて、運動神経が優れているだけの唯の人〟だと語るシーンがありますが、じゃあこの志々雄はどうして生きていられるんだ。

と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛!

元々人間の強キャラとして描くのではなく、もっと精神的なもの、過去の怨念や悪行を具現化したものとして描いたキャラクターなのだと思っています。

人の本性は修羅、現世こそ地獄。
地獄の業火の残り火。

地獄のような幕末の時代の残り火は、維新政府が公に出来ない悪行の数々が燻っている事を指しているのでしょう。彼の必殺技も、人を斬って斬って斬り続けた事で会得した発火術である事もそれっぽい。斬っても斬っても高笑いと共に起き上がる。剣心の後悔や自責の念を象徴したものが逆刃刀であるならば、明治政府の悪行の数々、ひいては新時代のために犠牲となった全てのモノを象徴しているのが志々雄真実であったのだろうと。

そんな魅力的なヒールの出番は、今作ではまだありませんでした。続編に期待!