Yoshishun

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!のYoshishunのレビュー・感想・評価

4.2
エドガー・ライト監督コルネット三部作(ホットファズ、ショーンオブザデッド、本作)コンプリート!
全作もれなく面白かった🍻

サイモン・ペッグ×ニック・フロスト×エドガー・ライトで贈る、古典SF映画にオマージュを捧げた痛快SFコメディ。学生時代に成し遂げられなかった12の酒屋呑み歩きをもう一度チャレンジするおっさんたちが、酔った勢いで世界を救う羽目に!?

個人的に外れなしのエドガー・ライト監督作ですが、多少の文句はあれど本作も楽しめました。名作『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』『ゼイリブ』のような既に侵略されてました系SF映画にエドガー・ライト監督らしさを詰め込んだアルコールムービー。これが面白くないわけない。呑みながら鑑賞も良し、酔った勢いで観るとシラフの時より数倍楽しいぞ!

各キャラクターの個性も活きていてそれぞれにちゃんと見せ場もある。最低な人類代表のゲイリー(名前すら伏線になるとはw)、酒を断ち全うに生きるアンドリューをはじめとした主要5人グループ、あるメンバーの妹サム、街の弁護士、真実を知る老人など、強い印象を残す。ブリティッシュコメディとしてユーモアにも溢れている。

三部作の完結編という位置付けなのもあり、今までのヒーロー映画的展開はほとんど無く、現実に呑まれ自由になれない大人たちを皮肉めいたどこか哀愁の漂う展開をみせる。「大人になれない」サイモン・ペッグは、前二作と比べても全くヒーロー要素はないし、むしろ親友の妹とトイレでヤっちゃっうわ、嘘の口実で親友たちを故郷に引き戻したりするダメダメさ。ニック・フロストに至っては、サイモンと馬鹿やってたのが嘘みたいに真面目な暮らしをしている。大人になると制限される自由というものを、三部作を通じてここまで鮮明に炙り出したのも初めてではないでしょうか。それでもやっぱり自由を訴え闘う酔っぱらい達が、健気で勇気をくれる。

侵略者の造形も、ある意味初めて観る形態のもので興味深い。黒や緑色の血を流すのが殆どですが、本作はペンキのように真っ青。そのおかげで本作の侵略者の異常性が感じ取れる。殴っただけで首は取れるし、簡単に潰せる。でも集団戦法でジワジワ追い詰めてくるから、俊敏に動けるゾンビみたいなものだろうか。

総合的にみると、観ていて楽しいエドガー・ライトらしい作品ですが、勿論ダメな部分も。
やっぱりラストはかなり拍子抜けでしたし、蛇足感。前二作よりもとっ散らかったまま終局を迎えてますし、何よりあまり爽快感がない。それもやはり主人公があまりにクズ過ぎて成長も何もないのが辛いですね。自由に生きる素晴らしさを謡うのは良いですけど、それだと侵略者との共存を図るラストはいただけないなぁと。
また、別にアクションもキレッキレなのはわかりますが、それ自体が印象に残るかと言うとそうでもない。『スカイライン』でいう『征服』と『奪還』を一本にまとめたみたいで、少し詰め込みすぎた感はあるかな。『ショーン・オブ・ザ・デッド』のクイーンの楽曲に合わせてオールで叩くショットみたいに、何かアクションにも工夫が見られればもう少し良かったように思えます。

とはいえ、前二作と比較しても大きく変わらぬ面白さ、というよりちゃんとキープし続けてきたのは素晴らしいと思います。またこのタッグで新作を作ってくれないかという気持ちです。
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