Pnori

渇き。のPnoriのレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
3.2
なんだこりゃ(笑)

バイオレンスだけどちっとも排他的じゃない。
スリラーだと思ったらサスペンス色が濃くて。
娘の狂気もなんのその、父親の愛で娘を取り戻すお話かと思ったら…全く違った(笑)

絶えず画面に映るのは、暴力とセックスと薬物。躊躇なく人を殴り殺し、壁に飛び散る血しぶきと大量の血溜まり。
けれどヤクザ映画のように感じないのは、大義も無ければ義理も無い。あるのは激情任せのただの暴力。
おまけに出でくる奴ら皆サイコパスばかりでまともに話も出来ない。主人公もしかり(笑)

時系列が前後するが、主要人物以外の登場人物を偏らせ、過去と現在に同じ人物を極力出さない事で区別をつけ易くしていたと思う。

緩急のつけ方が上手いのか、ずっと同じ暴力シーンを観ていると辟易してしまうが、娘が登場するシーンでは暴力は殆ど出てこない。バイオレンスは底辺に押し込まれ、幻想的でファンタジーな世界観。真逆である。

ただ、一貫して変わらないのが父親役の役所広司の汚さ(笑)蒸し暑い夏のねっとりとした中で汗を滴らせるアップなんか耐え難いし、降りしきる雪の中や腰まである雪で埋もれた一面の銀世界でも汚い。中谷美紀の美しさに助けられても、汚い(笑)

探しているうちに見えない娘とシンクロしていく父親。それが徐々に愛憎に変わっていく。幸せな家族に憧れているのに自分でぶっ壊すジレンマ。そんな自分はゴミだとわかっているが、娘は自分と同じそれも遥かに上回るゴミだったことに、血の繋がりを感じて歓喜する父親の姿が哀れだった。

現代社会の病巣を問題提起してはいるっぽいけれど、提起しただけで投げっぱなし。女子高生はみんなそんなにバカばっかりじゃないよ(笑)

娘の役者さんは、可愛くて不思議ちゃんの雰囲気を持っていればそんなに演技の力量は問われないこともあってか、笑い方が下手で下手で…そればっかりが気になった。
笑い方にも演技は必要。一辺倒な笑い方に白けてしまった。

ラストのホテルにあった数々のヤバイ道具は具体的にどういう使われ方をしたのかは想像にお任せ。かなりのインパクトで衝撃映像にもかかわらず消化不良なのが残念。

観終わって感じたのは、この映画は入れたい物を入れるだけ入れた欲張りな作品なんだなと。

エピソードばかり詰め込んで、人物像もその背景も薄くて浅い。ストーリー進行で用無しになったら半殺しか殺してしまう短絡的な展開に食傷気味になる。
せっかく豪華な俳優使っているのだからもう少し何とかならなかったのかなぁ。

熱演している役所広司の鬼気迫る演技が無ければ、この映画は本当に「なんだこりゃ」で終わってたな(笑)
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