【ちょっと懐古な歌姫たち】
題材がとてもよいですね。それだけでみる価値がありました。
また、入口こそ20 Feet from Stardom(原題)ですが、終わってみると、永く歌い続けてきた彼女たちにとってはもう、Stardomはどうでもよくなっているんじゃないか…と感じました。酸いも甘いも歌い分け至った、人の生の重みにじん、と来ます。
が、映画としての着地点はちょっと曖昧かなと。これはバックコーラスというものの未来が見えづらくなっている…という証なのでしょうか。現役シンガーさんの、以前より仕事が減ったというコメントに、何となくそんな気はするな…と頷いてしまった。
世界的にもソウル含有量少ないものが好まれて来ているのでしょうか。まさか世界が初音ミクの声で覆われる、なんてことはないでしょうが…(笑)。
60~70年代ソウル黄金期のバックシンガーを中心に紹介していて、確かにこれがとても見応え…聞き応えあるんですが、彼女らを継ぐ新世代が、比べるとちょっと寂しい。
独りフィーチャーされた、MJのバックも務めたジュディス・ヒルさんは、作中での印象は薄く、どこを目指しているのか見えづらい。
これが、制作者の懐古趣味が出たものなのか、次世代が育っていない証なのか…ドキュメンタリーとしてもっとはっきり、その辺言い切ってもよかったんじゃないかなぁ。
とはいえ大御所歌姫さんたちのパフォーマンスには単純に心、打たれます。歌の巧い人って、身体を楽器のように使って奏でますよね。これは映像だからこそ伝わることで、とても感じ入るところです。
そして、歌うとは主張より調和だ、と言い切る境地はすごいと思った。
面白いエピソードは幾つもありましたが、アフリカ系シンガーが、ゴスペルを歌う際の掛け合いの構造をステージにも持ち込んだ、という指摘には改めて納得。
また同じことを、スティーヴィー・ワンダーがセックスに例えているのが可笑しかった。確かにバックコーラスによる「ツッコミ」がないと、独りでハアハア、みたいに聞こえる曲もありますねえ。
ダーレン・ラヴさんが復活したのは、歌以外で地道に営業したことも大きいのでしょうね。顔見てあ、マータフ刑事の奥さん!とすぐ思い出しました(笑)。
あと、アイク&ティナ・ターナー全盛期のステージってすげえパワフルだったんだ。毎度オリンピック決勝戦みたいなスピード感。クスリ必須だったんじゃないか?
その他、アメリカ (+イギリス) の音楽史を彩る面白話がなかなか、詰まっておりました。映画の帰り、さっそく歌姫さんたちのCD借りようとシブツタ寄ったんですが…ほとんど、ない!これが日本の現実かあ…と涙しました(←うそ)。
…もちろん、サントラは買っちゃいましたけどね!(笑)
<2014.2.13記>