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フィルスの一人旅のレビュー・感想・評価

フィルス(2013年製作の映画)
5.0
ジョン・S・ベアード監督作。

『トレインスポッティング』(96)の原作者として知られるスコットランド出身の作家:アーヴィン・ウェルシュによる1998年発表の同名小説をジョン・S・ベアード監督が映画化したもので、演技派:ジェームズ・マカヴォイが主人公のクズ刑事を怪演しています。

警備補への出世を狙うスコットランド警察の刑事が、トンネルで発生した日本人留学生殺害事件の捜査を任されるが、堕落した生活に埋没し切っている刑事による捜査はなかなか捗らなくて、挙句の果てには同僚の女性刑事に捜査担当の座を奪われてしまい―というクライムコメディで、英国映画らしい苛烈なブラックユーモアが全編に溢れています。

同僚の妻を寝取る、同僚の悪口をトイレの壁に書き込む、気弱な親友を無慈悲に裏切る…と悪行三昧で、アル中&ヤク中、差別主義者の最低人間である主人公刑事の狂った日常をこれでもかと豪快に描きつつ、刑事が堕落の極致に至った経緯を彼自身が見る幻影をヒントに紐解いていく作劇で、日本人殺害事件に係る捜査サスペンスは物語のお飾り程度の扱いとなっています。映画の肝は、出世欲の塊と化した主人公の刑事らしからぬ異様な行状と人知れぬ過去と悔悟―胸糞刑事の“表と裏”の全容を暴き出していくことであり、一人の刑事の暴走と苦悩に迫った点でハーヴェイ・カイテル主演『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(92)等の旧作を連想させます。
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