いめーじ

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語のいめーじのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

作画、劇伴、OP、ED、アニメーションはとにかく最高。超現実な演出も意味があって良し。モノローグも会話も説明的すぎるけど圧倒的におもしろさが勝った。

簡単にまとめるなら新編のほむほむは、どう見ても『ランボー』だった。
ループ(ベトナム戦争)が終わり新しい世界で生きていく事を決めたが、キュゥべえ(保安官)に邪魔をされ、それが引き金となって自分の好きな空間(山)に閉じこもってしまい、そこで戦っていくにつれ、あの頃の記憶が次々と沸いてきて終盤にはほむほむ(ランボー)の願い(ベトナム戦争)はまだ終わっていなかったのだと分かる。
ランボーは大佐に苦悩を全部ぶちまけてそれでも生きていくことを決めたが、ほむほむは独りで完結し、まどかを諦めきれず悪魔化を選んでしまったのだ。
ランボーは歴戦の戦士であり大人だ。
ほむほむは多く戦ってきたものの、精神の成長はそれほどしておらず、なんだかんだ少女なので、あんな行動をとってしまったんだろう。ほむほむは「女子中学生」であることをちゃんと理解してみたら、あんなラストにも説得力を感じられてしまう。まぁ感じるだけで本音は「駄目だろ!」と思う。

まどかが転校生設定とか出会いをやり直すってレベルじゃない。俺の価値観になるけど、あのまどかは別人だよ。
概念になったまどかが…ほむほむの全てを知ることができて良かったって言ってたじゃん!
ほむほむの努力が伝わった時以上の関係になるなんてもう不可能。いっそ関わらないほうがマシなくらい中途半端だ。
まぁそもそも、ほむほむは理解されなくてもいいと思いながら戦い続けてきたんだし、自分自身に興味が無いだろうから、まどかとの関係性にもあんまり執着が無いのかもしれない。

ソウルジェムの中で、まどかの「みんなと離れるなんて私には無理だよ」という本音を聞いたことが悪魔化を選ぶトリガーになったんだろうけど、神になる決心をしたまどかはマミさんや杏子が亡くなったり、さやかが魔女化した酷い世界でメンタル的に成長し、魔法少女達を本気で救いたいと思えるようになったまどかだったから、ここで話したまどかの本音が向こうと同じだとは思えない。あの時のまどかに後悔なんてあるわけない。
もうほむほむには「本当のまどか」なんてとっくに分からないものになっていて「自分のまどか」だけを追いかけているんだ。でもその自分の理想のまどかが、ほむほむとの思い出がないまどかだなんてアレですね。
結局、ほむほむが何度も繰り返してきた戦いを理解してあげられる人はアニメの視聴者だけになってしまった。

ほむほむの行動はほぼ勝手な自己満足であり、相手の幸せを願ったっていうのは本心なんだろうし相手が幸せならそれでいいというのは理想的な愛し方だが、結局は自分が1番納得できる形を押し付けた自分勝手な話なんだよ。愛とか言っていたけれど、自分の弱さを都合よく解釈してるだけなんじゃねえのかと。自分はどうなってもいいと思い続けて自分を愛せないままでは他人もマトモに愛せやしないんです。まどかが愛しく思っていた日常を分かっていないよ。
親友のさやかを奪っているのは許せない。
質問攻めの時にさやかは近づいてもいなかったから完全に忘れたと捉えていいだろう。
幼い頃からまどかを支え続けたのはさやかであり、人格形成にも大きく関わっていたはずだ。
「この世界が尊いと思う?」って何度も聞きやがって…まどかの答えの中には、さやかと仁美との思い出も含まれているに決まってるだろうが!

最後にほむほむが落ちたのは、この先も堕ちていくだけってことを暗示しているのではないか。
タオルにしたら肌に悪そうなキュゥべえは部下に先を越された元上司みたいな目をして奴隷と化したみたい。あの状態のほむほむの支えになりたいと思う俺もいれば、キュゥべえのような扱いも悪くないんじゃないかと思う俺もいる。そんな哀愁とサディスティックな雰囲気を身に付けたほむほむがどうなってしまうのか気になるけど、この終わり方はある意味美しいし、解釈の余地が残っているからこそ長く楽しめる作品なので、続編をわざわざ作る必要はないと思う。
続編決まっちゃったけど、観てしまったらこの映画に価値を感じられなくなりそうで怖いんだよな。

BD特典にあった「1st take ver」も観たんだけど、悪魔化してからのセリフが気取りすぎていて痛さが倍になっていた。救いの無さも強くなっていて、音響監督が語っているようにエンディング後を想像させる含みは薄い。公開版で正解だ。

新編を蛇足と言う人の気持ちにもかなり共感できるけど、あくまで劇場版前後編の続編と考えるべきで、テレビシリーズのほむほむは普通にまどかと再会できたんだろうよ。

結論としては、俺はほむほむが大嫌いだけどガチで1番愛してる。