かたゆき

フォックスファイア 少女たちの告白/ガールズ・ギャング・ストーリーのかたゆきのレビュー・感想・評価

3.5
「私たちの物語が始まったのは、そう、1955年3月16日の夜、レッグスと私が新しいグループを結成してからだ。名前はまだなかった。でもすぐにレッグスが思いついた。“フォックスファイア(キツネ火)”。夢の中で聞いた言葉だとか…。そう、フォックスファイアこそ、まさに忠誠と信頼と愛で成り立つ血の団結。男どもに対抗しうる、少女たちのギャング集団」――。
東西冷戦が激化し始めていた50年代。
アメリカ南部のとある地方都市に生きる男勝りな少女レッグスは、女をまるで頑張った自分へのご褒美のようにしか見ない男たちに対抗するため、少女の少女による少女のための秘密結社「フォックスファイア」を結成するのだった。
最初は悪戯程度で収まっていた彼女たちの活動だったが、レッグスが警察に捕まり刑務所に収監されてからは次第にエスカレートしていく。
そして、強烈なカリスマ性でそんな少女たちを惹き付けるレッグスが保釈されると、フォックスファイアは本格的に過激な反体制派活動を活発化させてゆくのだった……。

特筆すべきなのは、本作で主役を演じたレッグス役の女の子のその類稀なるカリスマ性だろう。
キラキラと輝くような笑顔を見せていた前半での大人しい彼女から、中盤、刑務所に収監されてからの中性的な魅力を振りまく、今にも壊れてしまいそうなまるでガラス細工のナイフのような圧倒的な存在感には最後まで目が釘付けになってしまった。
彼女が、本作のためのオーディションで選ばれたそれまではずぶの素人だったなんて到底信じられない。
そんな彼女以外の女の子たちも皆、それぞれに個性豊かな魅力を放っていて素晴らしい(特にグループの用心棒的なあの太った女の子!)。
お話の方も、男の論理で形成される資本主義社会に徹底的に少女の視線で〝ファックユー!〟を突きつけるそのパワフルなメッセージに、僕は爽快さすら感じてしまった。

ただ残念だったのは、映画として全体的に少々冗長な面も否めないところ。
2時間弱ぐらいに纏めてくれれば、もっと格好良いガールズ映画の傑作になっていただろうに。
とはいえ、少女たちの生きるエネルギーに満ち溢れた、シスターフッド映画の秀作であったことは間違いない。
かたゆき

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