・ジャンル
ホラー/アートフィルム/Disturbing Movie/オムニバス
・エピソード一覧
1. Ovarian Eyeball
板に載せられた女性と手の話
2. Human Larvae
こじらせた変態兄が妊婦の妹を覗く話
3. Rebirth
全裸の男女6名が自然と交わる話
4. Right Brain/Martyrdom
信仰に反し性欲をこじらせた男の悪夢の話
・感想
性と死、快楽と苦痛や恐怖、男と女、神と悪魔など相反する2つの概念を題材に人間社会やキリスト教信仰の歪さ等を詩的且つグロテスクに描いたオムニバスホラー作品
パケ写と邦題の強烈さで以前から気になっていたので鑑賞
各エピソードにストーリーは一応あるにはあるもののアート性が強く論理立てた説明が困難なのであらすじは割愛
ゴア描写や精液を多用した不快描写と共にひたすら歪んだ観念や風刺が繰り広げられていく内容で少なくともパケ写から想像した物とは大分違った
所々ジャッロ的な色使いが見られる事もあって映像自体は嫌いじゃない
テーマ性も一貫しているのでごちゃついてはなかったけど映画としての評価がかなり難しいというのが正直なところ
社会の残酷さからの逃避として自分の中のネガティブなエネルギーを映画に投影する、という導入部の語り
論理や抑制を司る左脳と想像力や自由を司る右脳、という2つの持つ歪さを時に絡めあいながらも徐々に引き裂いていくという流れ自体は面白い
キリスト教要素もさほど知識がない自分でも汲み取れるレベルではあったので解釈はそれなりに出来る
その上で導入から論理的思考を否定してくるのが本作の難しい部分
だからこそ右脳と左脳は不可分である、と提示したかったのかな?と読み解けたりもするけど(ラストで描かれる“分裂”も完全には成し遂げられていない感じだったし)
興味深い内容ではあるし終始エグい内容で倫理から逸脱し続ける世界観は好みの範疇のはずなんだけど乗り切れなかったのはちょっと高尚な話過ぎたからかなぁ…と
頭の体操にはなるんだけど逆に考え込みながら観る事を余儀なくされるからシンプルに映像の強度を楽しむ事が出来ないのもモヤモヤ
“Vomitgore Trilogy“が好きな人には刺さると思う
ただその数倍難解だという覚悟は必要かも
ラース・フォン・トリアー監督の作品が親切設計に思える程だったからw
そんな中で個人的に面白かったのは2話目「Human Larvae」と4話目「Right Brain/Martyrdom」の2つ
前者は猟奇的なサイコパスが脳内で構築した論理を映像としてまざまざと見せつけられる様だったし、凶行を終えて残るのが虚しさと絶望というのが良かった
後者はキリスト教信仰が強い性欲を持つ男性にもたらす歪んだ女性嫌悪に始まり、キリスト教思想が人間に求める物と本能の相入れなさや非現実性の指摘という物が陰惨に描かれていて興味深い
まぁ一度は観ておいて良かったとは思うけどまた観たいとは多分ならないかな…
ずっと不快さに走り続けた禅問答みたいな作品だし現代人が抱える消化しきれない相反した感情とそれが生み出す狂気を煮詰めたような感じで自分の中のそういう観念を更に掻き乱される感覚に陥ったので…